AI×デザイン実践コース
~第6話 3つの言語で、同じ気持ちを伝える~
ユニバーサルデザイン(UD)の考え方を学び、文字サイズを14ポイント以上に引き上げ、行送り(文字サイズの1.5倍以上)、コントラスト(明るい色と暗い色の差)、十分な余白を整えて「誰にでも読める」小冊子に仕上げた。北村が「何ポイントにすればいいんだ」と具体的な単位で質問し、可読性と情報量のトレードオフ(どちらかを取ればもう片方が犠牲になる関係)に直面しても「読みやすさのほうが大事だ」と自ら判断を下した。
「英語版も、中国語版も作れないか」
【シーン】夏の午前、せとうちマーレブルの事務所。会議テーブルの上にUD対応が済んだ日本語版の小冊子(暖色系の配色、大きな文字、広い行間の抽象的なレイアウト)の校正刷りが数ページ広げられている。北村がスタッキングチェアに座り校正刷りを手に取って満足げに眺めたあと、身を乗り出して英語版・中国語版の制作を提案している。神谷がノートPCの前に座り、宮本がテーブル脇に立っている。 【ロケーション固定】kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=angle_desk.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png、kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】北村裕(62歳・男性、ライトブルーのボタンダウンシャツ、白いTシャツ、ベージュのチノパン、細い銀灰色の眼鏡、明るいシルバーのショートヘア、スタッキングチェアに座り校正刷りを手に持ち身を乗り出して話している)。宮本彩(24歳・女性、ティール~海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、ダークネイビーの細身ストレートパンツ、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでポニーテール、テーブル脇に立ち北村の話を聞いている)。神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツに白シャツ、ネイビーのネクタイを着用、黒い短髪、スタッキングチェアに座りノートPCの前で北村を見ている)。 【構図】手前に会議テーブル、テーブル上に校正刷り数ページとノートPC。北村が校正刷りを手に持ち身を乗り出している。宮本がテーブル脇に立つ。神谷がPC側に座っている。背景に横一列で並ぶデスク2台、ホワイトボード、窓からの夏の自然光。 【小物】会議テーブル上の校正刷り(暖色系の配色、大きな文字、広い行間。読める実テキストは描かない)、ノートPC。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一仕様・同一寸法(約140×70cm)の薄いグレーのメラミン天板デスク2台(左の北村デスクに黒いデスクトップPCモニター+クリアファイルの山+波模様マグカップ、右の宮本デスクに白ノートPC+マスタードイエローのリングノート+付箋付きサブモニター)、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル(約140×80cm)+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚(+右壁際に重ねた予備1脚)、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光+外に高松市内の中層ビルと空)+窓間のコルクボード(60×45cmの木枠、色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード)、右壁のグレーのスチールラック4段(上段に白い防災ヘルメットと双眼鏡、中段に白・水色・グレーのファイルボックスとA4バインダー、下段に段ボール箱・青い再利用コンテナ・清掃用トング・緑の作業手袋)。 【色調】窓からの夏の自然光が白・グレー基調の事務所を明るく照らす。テーブル上の校正刷りの暖色系配色が「UD対応済みの小冊子」を示す。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
夏のせとうちマーレブル事務所。UD対応が完了した日本語版の小冊子を会議テーブルの上に広げ、北村と宮本と神谷で最終確認をしていた。14ポイントの文字と1.5倍の行送りが、暖色系のページに落ち着きを与えている。文字サイズ、行間、コントラスト、余白。読みやすさを決めるこの4つを丁寧に整えたこの冊子は、お年寄りにも、片手でベビーカーを押すお母さんにも、誰にでも読めるものになっている。





日本語版の完成に安堵したのも束の間、新たな課題が投げ込まれた。英語版と中国語版の制作。翻訳を外注すれば費用と時間がかかる。NPOの限られた予算では簡単に決められる話ではない。しかし北村の言葉には、この小冊子を「もっと多くの人に届けたい」という素直な願いがこもっていた。



AI翻訳の速さと、伝わらない壁
【シーン】夏の午前、せとうちマーレブルの事務所。会議テーブル上のノートPCの画面にAI翻訳の出力(英語と中国語の抽象的なテキストブロック)が表示されている。北村と宮本がノートPCの画面を覗き込んでいる。神谷がノートPCの前に座り画面を操作している。もう1台のノートPCに西園寺のオンライン映像が映っている。 【ロケーション固定】kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=angle_desk.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png、kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/西園寺設定画像.png。 【人物】北村裕(62歳・男性、ライトブルーのボタンダウンシャツ、細い銀灰色の眼鏡、明るいシルバーのショートヘア、スタッキングチェアに座り画面を覗き込み目を丸くしている)。宮本彩(24歳・女性、ティール~海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでポニーテール、テーブル脇に立ち画面を注視している)。神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツに白シャツ、黒い短髪、スタッキングチェアに座りノートPCを操作している)。ノートPC画面越しに西園寺遥(30歳・女性、ベージュのジャケット、あごラインストレートボブ、細フレーム眼鏡、穏やかな表情で画面を見ている)。 【構図】会議テーブルを囲んで北村と神谷が座り、宮本が立っている。メインのノートPC画面にAI翻訳の出力(英語・中国語の抽象テキストブロック)。もう1台のノートPC画面に西園寺の姿。北村が画面に顔を近づけ驚いている。 【小物】ノートPC画面上のAI翻訳出力(英語と中国語の抽象的なテキストブロック。読める実テキストは描かない)、もう1台のノートPCに西園寺のオンライン映像。会議テーブル上の校正刷り。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一仕様・同一寸法(約140×70cm)の薄いグレーのメラミン天板デスク2台(左の北村デスクに黒いデスクトップPCモニター+クリアファイルの山+波模様マグカップ、右の宮本デスクに白ノートPC+マスタードイエローのリングノート+付箋付きサブモニター)、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル(約140×80cm)+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚(+右壁際に重ねた予備1脚)、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光+外に高松市内の中層ビルと空)+窓間のコルクボード(60×45cmの木枠、色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード)、右壁のグレーのスチールラック4段(上段に白い防災ヘルメットと双眼鏡、中段に白・水色・グレーのファイルボックスとA4バインダー、下段に段ボール箱・青い再利用コンテナ・清掃用トング・緑の作業手袋)。 【色調】窓からの夏の自然光。ノートPC画面のAI翻訳出力が白地に黒文字のクリーンな印象。北村の「驚き」の表情がシーンの焦点。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
神谷がAI翻訳ツールに日本語版の原稿を入力し、英語と中国語(簡体字)の下書きを生成した。ものの数分で2言語分の翻訳が画面に並んだ。翻訳会社への外注は、分量や納期によって見積もりから納品までの期間も費用も変わる。その下書きにあたる部分が、いまは数分で手元に並んでいた。もちろん品質が同じわけではないが、着手までの速さは比べものにならなかった。



もう1台のノートPCでオンライン会議を開き、西園寺に英語版の翻訳を共有した。西園寺が画面越しに翻訳文を丁寧に読み始めた。読み合わせを始めると、問題が次々に見つかった。





直訳としては正しい。英語の文法も語彙も間違っていない。しかし読み手の文化的な背景を考えると、何も伝わっていない。言葉を別の言語に置き換えただけでは、その奥にある意味や体験は届かなかった。


ネイティブチェック──文化の橋渡し
【種類】概念図(AI翻訳の多言語対応ワークフロー図)。人物は描かない。 【構図】左から右への3ステップのフロー図。左のボックス「日本語原稿」から矢印→中央のボックス「AI翻訳(0→1:8割を速く)」から矢印→右上のボックス「ネイティブチェック(1→10:文化の橋渡し)」から矢印→右下のボックス「多言語版完成」。中央ボックスには「英語・中国語の下書きを数分で生成」の補足。右上ボックスには「文化的な違和感・ニュアンスの修正」の補足。全体の下部に「AIが0から1を速く作り、人間が1を10に仕上げる」のキャプション。 【補助】タイトル「多言語対応のワークフロー──AI翻訳とネイティブチェック」。 【色調】白い背景。各ボックスは淡い色で区分(日本語原稿=淡いブルー、AI翻訳=淡いグリーン、ネイティブチェック=淡いオレンジ、多言語版完成=淡いゴールド)。矢印はグレー。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
AI翻訳の下書きは速い。しかしそのまま使えば「翻訳はされたけど伝わらない」小冊子になる。西園寺が、その溝を埋める方法を示した。




宮本がその場でスマートフォンを取り出し、友人にメッセージを送った。翌日にはフィードバック(具体的な修正のお願い)が返ってきた。AI翻訳では気づけなかった文化的な指摘が、箇条書きでびっしりと並んでいた。
【種類】概念図(AI翻訳の直訳と文化的に適切な訳の比較表)。人物は描かない。 【構図】3行×3列の比較表。列ヘッダーは「日本語」「AI翻訳(直訳)」「ネイティブチェック後」。1行目:「瀬戸内」→「Setouchi」(何のことかわからない)→「the Seto Inland Sea(穏やかな内海の情景が伝わる)」。2行目:「うどん踏み体験」→「udon stepping experience」(なぜ踏むのかわからない)→「kneading the dough with your feet to music(体験の楽しさが伝わる)」。3行目:「ぜひ訪れたい」→「must-visit」(押しつけがましい)→「worth a visit(自然な推薦)」。各行のAI翻訳列に小さく問題点の注記。 【補助】タイトル「AI翻訳の直訳とネイティブチェック後の比較」。 【色調】白い背景。AI翻訳列は淡い赤(問題を示す)、ネイティブチェック後列は淡いグリーン(改善を示す)。日本語列は淡いグレー。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
「"must-visit" は押しつけがましい印象がある。"worth a visit" のほうが自然だ」「写真のキャプションが英語だと意味が逆になっている」「"stepping" だけでは、なぜ足で踏むのかわからない。"kneading the dough with your feet to music" のように体験の楽しさを含めたほうがいい」直訳では見えなかった文化の隙間を、ネイティブの目が的確に指摘した。


「伝わらない」が悔しい
ネイティブチェックの結果を反映する作業に入った夕方、神谷はふと、画面に表示された "udon stepping experience" という訳語に目を止めた。
あの工房で見た、踏む足のリズム。小麦粉の匂い。藤原さんがかけた音楽に合わせて、笑い声があがった瞬間。あの空気を知っている自分にとって、"stepping" という一語は何も伝えていなかった。


北村の言葉は静かだったが、核心を突いていた。「伝わらない」と気づけるのは、現場を知っている人だけだ。一次情報——自分の足で歩き、自分の身体で体験した記憶が、翻訳の品質を判断する基準になっていた。どれだけ正確な翻訳でも、体験の実感を知らない人には「何か足りない」と気づくことすらできない。
多言語対応のワークフローを整える
「伝えたい」という気持ちは大事だが、感情だけでは仕事は前に進まない。感情を行動に変えるためには仕組みが必要だ。西園寺がワークフローを整理した。



北村が腕を組み、しばらく考えてから、静かに頷いた。


日本語・英語・中国語の3つの言語で「同じ気持ち」を伝える。そのためには、言葉を置き換えるだけでは足りない。それぞれの言語の向こう側にいる読者の文化を想像し、文化の橋を渡す人が必要だった。AIが速さを、人間が深さを担う。このワークフローが翻訳にも、デザインにも、これから先のあらゆる制作にも通じることを、3人は少しずつ実感し始めていた。
📌 覚えるポイント
- AI翻訳は下書きを数分で作れるが、文化的なニュアンス(微妙な意味合いの違い)や文脈までは反映されない。速さはAIに、仕上げは人に——最初からここを分けて設計する
- 中国語は簡体字(中国本土・シンガポール)と繁体字(台湾・香港)で別に扱う。来訪者の内訳と、チェックを頼める人の両方から字体を決める
- 言葉を別の言語に置き換える「翻訳」は、読み手の文化的背景に合わせて中身そのものを作り替えるローカライゼーションの一工程でしかない。翻訳で止めず、文化に合わせて調整するところまでを一続きの仕事として設計する
- AI翻訳の出力は、その言語を母語とする人に確認してもらってはじめて出せる状態になる。文化的な違和感や誤解を拾う「文化の目」は、まだ人が担うところ
- 観光の体験を自分の身体で知っているから、直訳の不十分さに気づける。一次情報は、翻訳の品質を判断するときの基準にもなる
- AI翻訳で叩き台を速く作り(0→1)、ネイティブチェックで人が仕上げる(1→10)。デザインでも翻訳でも、この分担の形は変わらない
- 言葉の意味が正しくても、読み手がその文化を共有していなければ何も伝わらない。「間違っていないのに伝わらない」ときは、文化的な文脈を添えるところから直す
📖 覚える用語
- ローカライゼーション(localization)
- 翻訳だけでなく、文化的背景や現地の慣習に合わせてコンテンツを適応させること。言葉を置き換える「翻訳」とは別の工程
- AI翻訳による多言語版の叩き台生成
- AI翻訳ツールで英語版・中国語(簡体字)版の下書きを数分で生成。外注と比較して大幅なコスト・時間の削減が見込める。ただし文化的ニュアンスの確認が必須であり、叩き台としての利用に限定する方針。
- ネイティブチェック体制の構築
- 宮本さんの大学時代の人脈を活用し、英語はアメリカ人の留学生、中国語は大学の先輩にネイティブチェックを依頼する体制を構築。NPOの予算に合った現実的な方法で品質を担保する。
- ローカライゼーションの意識共有
- 翻訳とローカライゼーションの違いをチーム全体で共有した。北村さんも「英語は読めないが、大事なものが抜けている気がする」と直感的に品質を判断しており、現場経験に基づく品質基準がチーム内に根づきつつある。
