モニターツアー実施コース
~第6話 12組の家族が、せとうちマーレブルの最初の実績になった~
モニターツアー2日目の帰路フェリーでアンケートを実施し、動画(SNS)経由9組・小冊子経由3組というチャネル別効果を確認した。参加者がSNSへの投稿を始め、UGC(お客さん自身が作って発信する写真・動画・口コミなどのコンテンツ)の循環が動き出した。同じうどんの味が行きと帰りで違ったのは、体験を経た神谷自身が変わったからだった。
ツアー2週間後のオフィス──データを並べる
【シーン】初冬の午前、せとうちマーレブルのオフィス。テーブルの上にアンケート集計シートとSNS分析画面のプリントが広げられ、神谷がホワイトボードの前に立ってマーカーで数字を書き出している。北村がデスクチェアに座って見守り、宮本が会議テーブルからデータシートを手にホワイトボードを見ている。ノートPCの画面に西園寺のビデオ通話が映っている。 【ロケーション固定】kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_board.png、第二参照=angle_meeting.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/北村裕設定画像.png。kagawa/characters/西園寺設定画像.png。 【人物】神谷(27歳男性、ネイビーのジャケット)がホワイトボードの前に立ち、赤いマーカーを手に数字を書いている。北村(62歳男性、紺の作業ジャケット、眼鏡)がデスクチェアからホワイトボードを見つめている。宮本(24歳女性、ティールのウィンドブレーカー)が会議テーブル側に座り、プリントアウトされた集計シートを手にしている。 【構図】ホワイトボードを中心に据え、手前左に北村のデスクの一部、手前右に会議テーブルの宮本。ホワイトボードの板面には赤・青・黒のマーカーで抽象的な数字と棒グラフ風の図形が書かれている(読める文字はなし)。テーブル上にA4のプリントが数枚、宮本のマスタードイエローのリングノート。 【小物】ホワイトボードのマーカー3本(赤・青・黒)とイレーサー、テーブル上のアンケート集計シート、SNS分析画面のプリント、宮本のマスタードイエローのリングノート、北村のデスク上の波模様マグカップ、ノートPCの画面に映る西園寺(30歳女性、あごライン丈のストレートボブ、黒の細フレーム眼鏡、ベージュ系のジャケット。小さく上半身のみ)。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:(1)奥壁2連窓下の同一寸法事務デスク2台、(2)約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード、(3)手前右のオーク調中古会議テーブル+スタッキングチェア、(4)奥壁の引き違い窓2連+コルクボード、(5)右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】初冬の午前の自然光が2連窓から差し込み、白・グレー基調のオフィスに柔らかい光を与える。ホワイトボードの赤・青のマーカーがアクセント。 【避ける】読める実テキスト、商標、写真風の質感、人物の顔の詳細な描写。
ツアーから2週間が経った。せとうちマーレブルのオフィスに神谷・宮本・北村が集まり、西園寺がノートPCの画面越しにオンラインで参加している。オーク調の会議テーブルの上にはアンケートの集計シート、SNSの分析画面をプリントしたA4用紙、小冊子のQRコードスキャンデータが広げられていた。
2週間前の船内で集めたデータが、紙の形でテーブルに並んでいる。アンケートの自由回答欄には参加者の筆跡が残っていた。「さぬきビート——ポップスBGMに合わせて生地の上で踊りながら足踏みするうどん体験——が最高でした」「子どもが帰ってからもうどんの歌を歌っている」数字だけでは伝わらない温度が、そこにあった。
神谷はホワイトボードの前に立ち、赤いマーカーでチャネル(お客さんが来てくれた経路)別の数字を書き出し始めた。まず小冊子のQRスキャン数。フェリーターミナルの設置分と体験工房の設置分を分けて書くと、フェリー設置分が最も多い。次に動画の再生数。さぬきビートの動画再生数が突出している。最後にSNSのプロフィール経由で旅行会社のツアーページに流れた送客数。ツアーページへの総アクセスのうち、この経路が15%を占めていた。


ホワイトボードに並んだ数字を、4人で眺めた。小冊子のQRスキャン数、動画の再生数、そして動画からの送客を測るSNSのプロフィールクリック数。紙の小冊子とデジタルの動画、この2つの媒体が12組の家族をフェリーに乗せ、うどんを踏ませ、瀬戸内の夕日を見せた——その全体像だった。2週間前の船上で感じた手応えが、いま数字の裏づけを得ようとしている。
ペルソナを実データで確かめる──設計の精度と範囲外の発見
【種類】概念図。ペルソナ検証の結果を図解。左にペルソナカード(林田家)の主要属性(地域:阪神間、家族構成:30代子育て家庭)、右に実データの照合結果。「予測どおり」の属性(近畿圏11/12組、全組家族連れ)を緑系の色、「範囲外」の需要(インバウンド問い合わせ15%)をオレンジ系の色で対比する。矢印でペルソナ属性と実データを結び、一致・不一致を色分けで表現。 【構図】左右対比のレイアウト。左カラムにペルソナカードのアイコン的な表現、右カラムにデータの棒グラフまたは数値表現。中央に矢印で結ぶ。下部に「設計の精度」と「範囲外の発見」の2つのラベル。 【補助】ペルソナカード部分は家族のシルエットアイコン。データ部分は丸数字や簡潔な棒で表現。色分けは緑(一致)とオレンジ(範囲外)の2色。 【色調】白背景に緑とオレンジのアクセント。文字は濃いグレー。清潔感のある情報整理図。 【避ける】読める実テキスト、実在する家族の写真、複雑すぎる図表、3色以上のアクセント色。

神谷がアンケートの属性データをホワイトボードに追記した。居住地域は兵庫県が8組、大阪府が3組、京都府が1組。全12組が近畿圏の家族連れだった。ペルソナの地域属性と家族構成は、ほぼ正しかったことになる。神谷たちがペルソナを設計したとき、「阪神間の30代子育て家庭」に絞り込んだ。ターゲットを広く取りたい誘惑を抑えて、具体的な1家族の像に集中した。あの判断が間違っていなかったことを、いま12組の実データが示している。


しかしペルソナの枠に入らなかった需要もあった。問い合わせ20件のうち3件という海外からの反応は、想定していなかったものだ。設計の精度と限界の両方を同時に確認できること。それが、実データでペルソナを検証する意味だった。正しかった部分は次のルートでも踏襲し、範囲外だった部分は新しいペルソナの候補として記録しておく。データは「答え」を出して終わるのではなく、「次の問い」を生んでいる。
クロスメディア分析──2つの媒体の貢献
【種類】概念図。チャネル別効果比較のグラフ。小冊子経由3組と動画(SNS)経由9組を棒グラフで対比。棒グラフの横にSNSプロフィール経由の送客15%を補足的に表示。下部にUGC投稿数(#さぬきビート 8組)を付記。 【構図】縦棒グラフを中心に据えたレイアウト。左の棒が「小冊子 3組」、右の棒が「動画・SNS 9組」。右の棒を3倍の高さで描く。棒の上に抽象的なアイコン(小冊子は紙のアイコン、動画はスマートフォンのアイコン)。右下に補助情報としてSNS送客15%とUGC 8組を小さく配置。 【補助】棒グラフの色は青系(小冊子)と緑系(動画・SNS)で区別。数字は大きく読みやすく。アイコンはシンプルなシルエット。 【色調】白背景に青と緑のアクセント。数字は濃いグレー。棒グラフの対比が直感的に分かる配色。 【避ける】読める実テキスト、複雑な凡例、3D表現、商標・ロゴ。

西園寺が画面共有で、小冊子と動画の役割を整理した。小冊子はフェリーターミナルと体験工房に設置されている。手に取った人がQRコードを読み込み、せとうちマーレブルの情報ページを経て、旅行会社のツアーページにたどり着く。紙に刷ったQRコードの行き先は後から変えられないので、いったん自分たちのページで受けて、その先のリンクを差し替えられるようにしてある。つまり小冊子は「すでに香川を意識している人」に届く媒体だ。一方、動画はSNSを通じてペルソナの日常に直接届く。プロフィールリンクからツアーページへの導線が動く。動画は「まだ香川を知らない人」にタイムラインで出会ってもらう媒体だった。同じ「旅行会社のツアーページに送客する」というゴールに対して、小冊子は自分たちの情報ページを経由し、動画はプロフィールのリンクから直接向かう——認知の入り口が異なる道から人を運んでいた。



2つの媒体がそれぞれ違う経路で人を運び、そこに参加者自身のSNS投稿が加わった。制作者が計画できるコンテンツと、体験者が自発的に生み出すコンテンツでは、読み手にとっての信頼の性質が異なる。この2種類が同時に存在し、互いを補い合っている状態。それが1ルートの限られた予算で実現できたことの意味は大きかった。
県からの連絡──小さな成功が次の扉を開く
【シーン】せとうちマーレブルのオフィス。北村が窓際で携帯電話を握りしめ、電話を終えた直後の表情。少し震える手で携帯を持っている。会議テーブル側で宮本が椅子から立ち上がりかけている。テーブルの上にはさきほどまで分析に使っていた資料が広げられたまま。窓から初冬の自然光が差し込んでいる。 【ロケーション固定】kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】北村(62歳男性、紺の作業ジャケット、眼鏡)が窓際に立ち、右手に携帯電話を握りしめている。宮本(24歳女性、ティールのウィンドブレーカー)が会議テーブルの椅子から腰を浮かせ、驚いた姿勢。神谷(27歳男性、ネイビーのジャケット)がホワイトボード付近から北村の方を見ている。 【構図】北村を画面右寄り、窓の自然光を背にして配置。宮本は画面左の会議テーブル付近で立ち上がりかけの姿勢。神谷はホワイトボード付近にいる。テーブル上のデータ資料が散らばっている。 【小物】北村の携帯電話、テーブル上のアンケート集計シート、ホワイトボードに書かれた抽象的な数字と図形、窓からの自然光、宮本のマスタードイエローのリングノート。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:(1)奥壁2連窓下の同一寸法事務デスク2台、(2)約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード、(3)手前右のオーク調中古会議テーブル+スタッキングチェア、(4)奥壁の引き違い窓2連+コルクボード、(5)右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】窓からの初冬の自然光が北村の背後から差し込み、シルエット気味に人物を照らす。室内の白・グレーの色調に対して、窓外の空の明るさが対比を作る。 【避ける】読める実テキスト、商標、涙や大げさな感情表現、写真風の質感。
クロスメディア分析の整理がひと区切りつき、宮本がお茶を入れ直していた。テーブルの上に集計シートとプリントが広がったままの静かな午前だった。そのとき、北村の携帯が鳴った。北村がテーブルを離れ、窓際で電話を受けた。短いやり取りだった。電話を切った北村が、少し震える声で言った。

宮本が椅子から立ち上がった。


北村の手がまだ少し震えていた。眼鏡を外し、そっと目頭を押さえた。この半年、いつも穏やかだった北村からは想像もつかない姿だった。小さなNPOが2つの媒体で1ルートのツアーを作り、12組の家族を迎えた。規模は小さい。けれどその小さな実績が、県という大きな組織の目に留まった。
宮本の目が潤んでいた。入職してからずっと、このNPOの活動を地道に続けてきた。海岸清掃も、地域の打ち合わせも、広報も。外からの大きな評価はなかなか届かなかった。県の担当者が連絡をくれたという事実が、「やってきたことは間違っていなかった」という確かな証明になっていた。

次は小豆島──2ルート目への展望
しばらくの沈黙のあと、北村が眼鏡をかけ直し、ホワイトボードに目をやった。チャネル別の数字、ペルソナ照合の結果、クロスメディア分析の整理。12組分のデータが、そこに並んでいる。半年前のこのオフィスには、数字で語れるものが何もなかった。いまは小さくても確かなデータがある。北村はそれらを順に見つめてから、静かに口を開いた。




北村の「次は小豆島で」という言葉は、命令ではなかった。宮本に「どう思う」と問いかけた。北村が宮本の意見を求めたのは、もう一方的に任せるのではなく、一緒に考える姿勢が身についたからだ。1ルート目では神谷が中心になって回してきた部分も多い。でも次のルートでは、宮本と北村が主体になって動いていく。神谷の出向期間には限りがある。型を渡し、型を使えるようになった人たちが次を動かす。それが、この取り組みの本当の成果になっていく。
📌 覚えるポイント
- 小冊子のQRスキャン数、動画の再生数、SNSからの送客数を横断して比べると、それぞれの媒体が異なる経路で集客に貢献していることが分かる。1つの数字だけでは全体像は見えない
- 母数12組では統計的な結論は出せない。それでも「動画経由9組・小冊子経由3組」という差は偶然では片づけにくく、次の施策を考える材料になる。傾向は読み、断言は避ける
- ペルソナを実データで確かめると、設計の精度と限界の両方が見える。予測どおりだった属性(近畿圏・家族連れ)と、範囲外だった需要(海外からの問い合わせ20件中3件)を区別して、次のルートの改訂材料にする
- 参加者が自発的に投稿した8組分のコンテンツは、制作者が作った素材とは違う信頼を持つ。体験者自身の声が次の参加者を呼び、集客の循環が回り始める
- 小冊子はすでに香川を意識している人に届く紙の媒体、動画はまだ香川を知らない人とSNSのタイムラインで出会うデジタルの媒体。認知の入り口が違う媒体が、同じゴールへ向かう
- 12組という小さな規模でも、県の観光振興担当が反応した。スモールスタートで確かめた成果を積み上げることが、2ルート目への第一歩になる
📖 覚える用語
- クロスメディア分析
- 複数の媒体(小冊子・動画・SNS)の効果を横断的に測定・比較する分析手法。それぞれの媒体がどの経路でどれだけの集客に貢献しているかを可視化する。
- クロスメディア分析の結果と次のアクション
- 今回の数字は「傾向までを読み、断言はしない」という線で扱う方針にしました。加えて、小冊子はQRのスキャン、動画はプロフィールのリンクと計測の経路が別々なので、比較の粒度がそろっていません。場所別のQRは小冊子の設計時点で分けてありますが、遷移先が情報ページのため、どのスキャンが申し込みまで進んだかは追えていません。次のルートでは、スキャンから申し込み完了までを同じ識別子でつなぎ、接点ごとの申し込み数を最初から追える形に一段進めます。あわせて小冊子の置き場所と動画との役割分担も見直します
- ペルソナの実データ照合とセカンダリーペルソナの検討
- ペルソナカードは作って終わりの資料ではなく、ルートごとに実データで更新していく資料として扱うことにします。今回一致した属性は次のルートの初期値としてそのまま引き継ぎ、範囲外だった需要は別枠に記録して判断材料をためます。インバウンド層を正式なペルソナに加えるかどうかは、問い合わせの言語や希望される内容がもう少し集まってから、西園寺さんと判断したいと考えています
- 県の観光振興担当からの連絡
- お会いするまでに、12組分のデータを一枚の資料にまとめておきます。チャネル別の内訳、ペルソナ照合の結果、参加者の投稿の広がりの3点に絞る形です。先方が関心を持ってくださったのは実績の大きさではなく、規模が小さくても検証の筋道が通っているところだと思いますので、それが伝わる並べ方にします
