AI×デザイン実践コース
~第9話 小冊子は、置く場所で効果が変わる~
印刷所にデータを送ったところ、RGBからCMYKへの変換と解像度の確認を求められた。トンボと塗り足しを設定して再入稿し、テスト印刷を依頼。1回目は画面より暗い仕上がりだったため色の鮮やかさを調整して再入稿し、2回目でイメージどおりの色に近づいた。本番印刷を発注し、500部の刷り上がりを待つことになった。
500部が届いた朝
【シーン】初秋の朝、せとうちマーレブルの事務所。会議テーブルの上に段ボール箱から出した小冊子が並び、北村が最初の1冊を手に取ってページをめくっている。宮本と神谷が横で見守っている。 【ロケーション固定】kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=angle_desk.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png、kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】北村裕(62歳・男性、ライトブルーのボタンダウンシャツ、白いTシャツ、ベージュのチノパン、細い銀灰色の眼鏡、明るいシルバーのショートヘア、スタッキングチェアに座り小冊子を両手で持ちページをめくりながら穏やかな微笑みを浮かべている)。宮本彩(24歳・女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、ダークチェスナットブラウンのポニーテール、青緑色のシュシュ、スタッキングチェアに座り北村の手元を見て明るく微笑んでいる)。神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツに白シャツ、ネイビーのネクタイを着用、黒い短髪、スタッキングチェアに座り穏やかな笑顔で北村を見ている)。 【構図】会議テーブルの手前に3人が並んで座る。テーブル上に開いた段ボール箱と取り出した小冊子が数冊並ぶ。中央の北村が1冊を両手で持ちページをめくり、左に宮本、右に神谷が見守る構図。 【小物】段ボール箱(開封済み、中に小冊子が詰まっている)、会議テーブル上に完成した小冊子数冊(暖色系の表紙、読める実テキストは描かない)。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一仕様・同一寸法(約140×70cm)の薄いグレーのメラミン天板デスク2台(左の北村デスクに黒いデスクトップPCモニター+クリアファイルの山+波模様マグカップ、右の宮本デスクに白ノートPC+マスタードイエローのリングノート+付箋付きサブモニター)、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル(約140×80cm)+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚(+右壁際に重ねた予備1脚)、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光+外に高松市内の中層ビルと空)+窓間のコルクボード(60×45cmの木枠、色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード)、右壁のグレーのスチールラック4段(上段に白い防災ヘルメットと双眼鏡、中段に白・水色・グレーのファイルボックスとA4バインダー、下段に段ボール箱・青い再利用コンテナ・清掃用トング・緑の作業手袋)。 【色調】窓からの初秋の朝の自然光が白・グレー基調の事務所を明るく照らす。段ボール箱と完成した小冊子の暖色が画面のアクセント。北村の穏やかな微笑みがシーンの焦点。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
晩夏の朝。せとうちマーレブルの事務所に宅配便の段ボール箱が3つ届いた。テスト印刷の色味調整を経て、ようやく刷り上がった本番の500部だ。
北村が最初の箱を開けた。緩衝材の下に、小冊子がきっちりと詰められている。1冊を取り出し、表紙をじっと見つめてから、ゆっくりとページをめくり始めた。宮本と神谷が横で見守っている。




宮本の配置候補リスト
500部をどこに配置するか。宮本がフィールドノートを開き、地元の知識をもとに配置候補をリストアップし始めた。西園寺もオンラインで参加している。





宮本が挙げた5つの候補は、それぞれ旅行者が立ち寄るタイミングも客層も異なる。フェリーターミナルは到着直後の「これから何をしよう」というタイミング。さぬき体験工房は体験の待ち時間。ホテルは夕食後の「明日はどこに行こうか」という計画タイミングだ。置く場所が違えば、小冊子を手に取る瞬間の気持ちも違う。
しかし500部は有限だ。すべてに均等に配ると、どの場所でも補充が追いつかなくなる。どこを優先するか。その判断の軸になるのが、ペルソナ(たった一人の具体的な読者像)の行動動線だった。
ペルソナの行動動線で優先順位をつける
【種類】概念図(フロー図)。人物は描かない。 【構図】上から下への縦フロー。最上部に「ペルソナ:林田家(阪神間在住・家族連れ)」のラベル。その下にフローの矢印で接続された3つのボックス:①「フェリーターミナル(到着・最初の情報接点)」→②「さぬき体験工房(体験・待ち時間)」→③「ホテルのロビー(宿泊・翌日計画)」。各ボックスの右側に配置優先度を示すバー:①が最も長く「配置優先:高」、②が中程度「配置優先:中」、③がやや短い「配置優先:中」。下部に補助ボックスとして「空港・レンタカー営業所(少数配置)」。全体として「旅の動線に沿って配置場所の優先順位が決まる」ことが一目でわかるレイアウト。 【補助】タイトル「ペルソナの行動動線と配置優先順位」。下部に「旅のスタート地点から順に優先度が高い」のキャプション。 【色調】白い背景。フロー矢印は瀬戸内ブルー系。ボックスは暖色系のグラデーション(優先度が高いほど濃い色)。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
この小冊子のペルソナは林田家だ。阪神間に住む30代の夫婦と未就学の子ども1人の家族連れで、ジャンボフェリーで神戸から高松東港に渡り、屋島とさぬき体験工房を巡る1泊2日の旅を想定している。神谷がペルソナの行動動線をホワイトボードに書き出した。






ペルソナの行動動線に沿って配置の優先順位が決まった。フェリーターミナルに最も多く、次にさぬき体験工房、そしてホテルのロビー。残りを空港とレンタカー営業所に少数ずつ配置する。「どこに置くか」は「誰に届けたいか」の裏返しだった。
宮本の現場知識がなければ、候補を挙げることすらできなかった。神谷のペルソナ視点がなければ、優先順位をつける基準がなかった。2つの視点が合わさって、初めて配架計画が成り立つ。
QRコードで「置いて測る」仕組みを作る
【種類】概念図(システム図)。人物は描かない。 【構図】左から右への横フロー。左側に3つの配置場所アイコン(「フェリーターミナル」「さぬき体験工房」「ホテル」)が縦に並び、それぞれに異なるQRコードの模式図(白黒の四角い模様)が添えられている。中央に「スキャン」の矢印が3本、右側の「せとうちマーレブル情報ページ」に向かって集まる。情報ページの下に「場所別スキャン数」の簡易グラフ(棒グラフ3本、長さが異なる)。全体として「配置場所ごとに異なるQRコード→1つの遷移先→場所別の効果計測」という流れが一目でわかるレイアウト。 【補助】タイトル「QRコードで『置いて測る』仕組み」。下部に「配置場所ごとに異なるQRコード → スキャン数で配置効果を数値化」のキャプション。 【色調】白い背景。QRコードは黒白。配置場所アイコンは瀬戸内ブルー系。棒グラフはオレンジ系の暖色。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
配置場所が決まったところで、西園寺がもうひとつの提案をした。







配置場所ごとに異なるQRコードを差し込みカードで挟み込み、読み取り数で配置効果を数値化する。次回の増刷時には冊子本体にQRコードを印刷する。読み取り数が多い場所には多めに配置し、少ない場所は配置方法を見直す。計測の仕組みがあれば、次の判断をデータに基づいて行える。西園寺はさらにもうひとつの原則を思い出させた。


「1ページずつ意味がわかる」
配置場所とQRコードの設計が決まり、一段落ついた。北村がもう一度、完成した小冊子を手に取った。ページをゆっくりめくりながら、1ページずつ指で追っていく。目次のページで手が止まった。





外部に丸投げした旧版とは違う。自分たちが企画し、AIで叩き台を作り、デザインの原則で整え、誰もが読めるように配慮し、多言語対応を施し、法務チェックを通し、色を調整してテスト印刷を繰り返した。その全工程に関わったからこそ、北村は1ページごとの意味を自分の言葉で語れるようになっていた。
ターミナルに立つ神谷
その日の夕方、神谷は事務所に残り、ノートPCで西園寺とのオンライン会議を再び開いた。画面の向こうの西園寺が、穏やかに切り出した。



【シーン】初秋の夕方、高松東港のフェリーターミナル。神谷が完成した小冊子を1冊手に持ち、ターミナルビルの前に立っている。背景にフェリーの白い船体と初秋の柔らかい夕方の光。静かな充実感のある穏やかな表情。 【ロケーション固定】kagawa_12_takamatsu_port に厳密準拠。第一参照=angle_terminal.png、第二参照=angle_parking.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツに白シャツ、ネイビーのネクタイを着用、黒い短髪、完成した小冊子を右手に持ちターミナルビルの前に立っている、静かな充実感のある穏やかな表情)。 【構図】主棟の正面付近に神谷が立ち、右手に小冊子を1冊持っている。背景右にフェリーの白い船体が見え、空には初秋の夕方の柔らかいゴールデンオレンジの光が広がる。ターミナルのガラス扉に空の色が映り込む。 【小物】神谷が手に持つ完成した小冊子1冊(暖色系の表紙、読める実テキストは描かない)。 【ロケーション整合】kagawa_12_takamatsu_port:箱形2階建ての白色RCフレーム主棟(白い柱・梁+2層分の大きな縦長グリッドガラス+フラットルーフ上の大型白色矩形サイン塔、文字・ロゴなし)+1階中央寄りのガラス出入口+前面の細い芝生帯・縁石・舗装歩道、コンクリート岸壁+黒い鋳鉄のボラード(係留ビット)列+黄色い注意ライン、匿名の白い大型フェリー側面(喫水線のダークレッド帯+上部のダークネイビー帯+窓列、ファンネル意匠は抽象化)、主棟から船方向へ延びる細長い青系屋根付き徒歩動線+船側の長い白い外部階段・ギャングウェイ、初秋の夕方のゴールデンオレンジ〜ピーチピンクの空+遠景の高松市街シルエット+屋島の台地形状。 【色調】初秋の夕方のゴールデンオレンジ〜ピーチピンクの柔らかい光が、白いRCフレームの主棟とフェリーの船体を温かく照らす。コンクリートの岸壁にも夕方の暖色が薄く映る。静かで穏やかな雰囲気。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感、横長低層スラブ棟、横長暗色窓帯、架空のL字形全面ガラス通路、細い独立エレベーター塔、空港型ボーディングブリッジ、船名・会社ロゴ・固有のファンネル意匠。
翌日の夕方。神谷は高松東港のフェリーターミナルに立っていた。配置場所の下見に来たのだ。手には完成したばかりの小冊子を1冊持っている。初夏に初めてこの港へ渡る船の中で、売店のおばちゃんに「ぴっぴ」と言われて意味がわからなかった。あれからまだ半年も経っていないのに、ずいぶん遠くまで来た気がする。
ターミナルの待合スペースの壁際に、小型のラックを置かせてもらえそうな空きがあった。ここに、自分たちが作った小冊子が並ぶ。何も知らない旅行者が、あの日の自分のように初めてこの港に降り立って、たまたま手に取ってくれるかもしれない。
📌 覚えるポイント
- 同じ小冊子でも、到着直後のフェリーターミナルに置けば「これから何をしよう」と行き先を探している人に届き、ホテルのロビーに置けば翌日のプランを考えている人に届く。「どこに置くか」は「誰に届けたいか」で決まる
- 500部は限りある数。均等に配るのではなく、ペルソナが旅の中で最初に触れる場所から順に、効果の高いところへ数を集中する
- 配置場所ごとに違うQRコードを用意すれば、どこでどれだけ読み取られたかを数字で把握できる。今回は刷り上がった冊子に差し込みカードで挟み、次の増刷から冊子本体に印刷する
- 制作物は完成した時点ではゴールではない。どこに配置し、誰に届き、どれだけ反応があったかを測って改善できるところまでが配架計画
- 「数字で語り、感覚で確かめる」は配架でも同じ。QRコードの読み取り数が「数字」、フェリーターミナルで旅行者が手に取る様子を見るのが「感覚」。どちらか一方だけでは判断を誤る
- デザインを整え印刷を終えれば「制作」は終わるが、「配置」はそこから始まる別の判断。作る人の視点と届ける人の視点を両方持ってはじめて、届けたい相手に届く
📖 覚える用語
- 配架(はいか)
- どこに置くかで手に取る人が変わる。ペルソナの行動動線に合わせた配置設計
- 配置場所の優先順位を決定
- ペルソナ(林田家:阪神間在住の家族連れ)の行動動線をもとに、日本語版はフェリーターミナル→さぬき体験工房→ホテルのロビーの順に配置優先順位を設定した。英語版・中国語版は外国人旅行者が最初に通る空港やホテルに優先配置する。500部を効果の高い場所に集中配置する方針を固めた。
- QRコードによる場所別計測の設計
- 今回は刷り上がり済みのため、配置場所ごとに異なるQRコードを刷った差し込みカードを冊子に挟み込む方式とし、次回の増刷時には冊子本体にQRコードを印刷する方針とした。QRコードの遷移先は自分たちの案内ページとし、そこから旅行会社のツアーページへ送る導線にした。場所を識別するパラメータをURLに付与して場所別のアクセス数を集計できるようにした。
- 次フェーズ(動画制作)への移行準備
- 小冊子の制作から配架計画までの一連の工程が完了した。次の媒体である動画の制作フェーズに移行し、同じ観光素材を「時間のデザイン」で届けるワークフローを開始する予定。
