プロローグ ─ 香川観光編コース
~第2話 せとうちマーレブルの「困りごと」を聞く~
登場人物

北村 裕(きたむら ひろし)
NPO法人せとうちマーレブル 代表理事 / 62歳
丸山社長の大学時代のテニスサークル仲間。瀬戸内の観光振興に長年情熱を注いできた。伝えたいものは溢れているが、情報発信の手段が追いつかず、新しい力を求めている。温かく丁寧な口調で、初対面の相手にも気負わせない空気を持つ。

宮本 彩(みやもと あや)
NPO法人せとうちマーレブル スタッフ / 24歳
関西の大学を出てUターンで入った2年目のスタッフ。明るい笑顔と親しみやすい口調が印象的。北村の溢れる情熱を受け止めつつ、限られた人数と予算の現実を冷静に見ている、チームの実務を支える存在。
まるやまマートの丸山社長から、大学時代の旧友・北村裕が経営する香川のNPO法人「せとうちマーレブル」への在籍出向を提案された神谷。西園寺に相談し、「困りごとから始める。全部やろうとしないで、1つに絞る」という原則を胸に、自分の意思で香川行きを決断した。
瀬戸内の朝焼けに目を覚ます
【シーン】ジャンボフェリー屋上デッキ「空のテラス」、初夏の明け方5時台。神谷が朝焼けの瀬戸内海を見つめる場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_11a_ferry_deck に厳密準拠。第一参照=master.png、第二参照=angle_bench.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツの上に薄手のジャケットを羽織り、風で裾が揺れる。黒い短髪、不安と期待が混じった表情で水平線を見つめる)。 【構図】神谷が2段式ステンレスパイプの手すりに片手を置き、デッキの端から朝焼けの海を眺めている。手前に中茶のチーク材ウッドデッキと中央の鮮やかなグリーンの人工芝エリア、奥に白いキャンバス&木枠のデッキチェアが2脚。背景に瀬戸内海の水平線と、ピーチピンクからラベンダーに移り変わる空。 【小物】設定画像に合わせ、手すり沿いに白い鉄板の船体壁、背後に白い円筒形のファンネル(上部に青い帯)と白い階段室ハウス。 【ロケーション整合】kagawa_11a_ferry_deck:約20×30mの屋外空間、中茶チーク材ウッドデッキ+中央に人工芝(鮮やかなグリーン、アルミ見切り材)、2段式ステンレスパイプ手すり(約2m間隔)、白い鉄板の船体壁、白い円筒ファンネル(上部青帯)、白いキャンバス&木枠デッキチェア4〜6脚。 【色調】朝焼けのピーチピンク〜ラベンダーの空、海面はダークネイビー〜コバルト。暖かい朝の光が水平線から差し込み、デッキに長い影。彩度やや高め、新しい旅立ちの期待感。 【避ける】読める実テキスト、商標、他の乗客、過度に明るい昼光。
神戸港を深夜に出航したフェリーが、瀬戸内海を渡っている。初夏の明け方、肌寒さに目を覚ました神谷がデッキに出ると、水平線の切れ間からあたたかなオレンジ色の光がにじみ、水面にまっすぐな光の筋を落としていた。
ウッドデッキと人工芝が広がる「空のテラス」。ステンレスの手すりに手を置くと、初夏でもひんやりと冷たい。潮風に上着の裾が揺れる。昨日までのスーパーの蛍光灯の下とは、まるで違う世界だった。
ぴっぴ、温かいのと冷たいのどっちがええ?
【シーン】ジャンボフェリー船内2階のうどん売店、早朝。おばちゃんが神谷にうどんを出す場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_11b_ferry_udon に厳密準拠。第一参照=angle_counter.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/売店のおばちゃん設定画像.png、kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】売店のおばちゃん(60代前半・女性、小柄でふくよか、白い調理用上着にえんじ色の胸当てエプロン、白い三角巾の下にグレー混じりのお団子ヘア、目尻に深い笑い皺、片手にお玉)。神谷悠馬(27歳・男性、薄手のジャケット姿、スツールに座り少し驚いた表情で「ぴっぴ?」と聞き返す様子)。 【構図】カウンター越しの構図。おばちゃんが奥の厨房側でお玉を持ち、神谷が手前のハイカウンターのステンレススツールに座る。厨房の茹で釜から白い湯気が立ち上る。カウンター上に箸立てと調味料ラック。 【小物】設定画像に合わせ、奥にレンジフード、黒いタッチパネル式券売機、白い壁面メニュー短冊(抽象表記)。大きな矩形の窓から朝の瀬戸内海の海面が明るく見える。 【ロケーション整合】kagawa_11b_ferry_udon:2階左舷ロビーダイニング、キッチンカウンター(ステンレス天板+木目メラミン正面)+茹で釜+湯気+レンジフード、ハイカウンター(木目天板)+ステンレススツール6脚+箸立て+調味料ラック、大きな矩形の窓(海面が見える)+ライトウッド+グリーンのシート、白い天井丸型ダウンライト+一部露出の白塗りパイプ。 【色調】朝の海面からの柔らかい自然光+白い蛍光灯、湯気が光を拡散。彩度やや低め、温かいうどんの湯気と朝の穏やかな空気。 【避ける】読める実テキスト、商標、他の乗客、丸い舷窓(実際は大きな矩形窓)。
朝の冷えた体を温めようと、船内のうどん売店に足を向けた。木目調のカウンターの奥で、白い湯気が立ち上っている。矩形の窓から朝の海面が光って見えた。




うどんが茹で上がるのを待つ間、神谷は窓の外に目をやった。朝の海面が静かに光っている。おばちゃんが湯気の向こうから声をかけた。

カウンターに置かれたうどんは、透き通っただしに太い麺が浮かび、刻みねぎと天かすが添えられていた。ひと口すすると、だしの温かさが体に沁みた。おばちゃんはにこにこしながら、他のお客さんの対応に戻っていった。
ようこそ香川へ
【シーン】高松東港ターミナル、初夏の早朝6時台。フェリーから降りた神谷を宮本が出迎える場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_12_takamatsu_port に厳密準拠。第一参照=angle_boarding.png、第二参照=angle_dawn.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツにキャリーケースを引き、少し緊張した表情)。宮本彩(24歳・女性、ティール〜海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、ダークネイビーの細身パンツ、白いローカットスニーカー、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでゆるいポニーテール、明るい笑顔で手を振る)。 【構図】コンクリート岸壁でタラップを降りてきた神谷の前方に、宮本が片手を上げて笑顔で迎えている。背景に箱形2階建ての白色RCフレーム主棟(白い柱・梁が見え、正面の大部分を2層分の大きな縦長グリッドガラスが占める)と、フラットルーフに載る大型の白い矩形サイン塔(文字・ロゴなし)。遠景にピーチピンク〜ラベンダーの朝焼け空と高松市街のシルエット、屋島の台地形。 【小物】設定画像に合わせ、岸壁に黒い鋳鉄のボラード、黄色い注意線。匿名の白い大型フェリー船体(喫水帯ダークレッド、上部帯ダークネイビー、ファンネル意匠は抽象化)。 【ロケーション整合】kagawa_12_takamatsu_port:箱形2階建ての白色RCフレーム主棟(白い柱・梁+2層分の縦長グリッドガラス+フラットルーフ上の大型白色矩形サイン塔、文字・ロゴなし)、コンクリート岸壁+黒い鋳鉄ボラード+黄色い注意線+防舷材、主棟から船方向へ延びる細長い青系屋根付き徒歩動線+船側の長い白い外部階段・ギャングウェイ、匿名の白い大型フェリー船体、朝焼け空+高松市街シルエット+屋島台地形。 【色調】朝焼けのピーチピンク〜ラベンダーの空、港の朝の清涼な光。彩度やや高め、新しい土地への到着と出会いの期待感。 【避ける】読める実テキスト、商標、他の乗客・見送り客、過度にモダンなターミナル描写、横長低層スラブ棟、横長暗色窓帯、架空のL字形全面ガラス通路、細い独立エレベーター塔、空港型ボーディングブリッジ、船名・会社ロゴ・固有のファンネル意匠。
フェリーが高松東港に接岸した。ターミナルビルの向こうに、初夏の朝の空が広がっている。タラップを降りると、ひとりの女性が笑顔で手を振っていた。




宮本彩。24歳。明るい笑顔と、親しみやすい口調が印象的だった。車に乗り込むと、車窓に初夏の高松の街並みが流れ始めた。



車窓の向こうに、穏やかな瀬戸内の海が見え隠れした。

宮本が指差した方角に、平たい台地形のシルエットが浮かんでいる。まるやまマートの周りにはなかった景色だ。
北村裕という人
【シーン】せとうちマーレブルの事務所、初夏の午前。北村が初対面の神谷を温かく迎え入れる場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png、kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。 【人物】北村裕(62歳・男性、細身で姿勢がよい、白に近い明るいシルバーの短髪で額広め、細い銀灰色のメタルフレーム眼鏡、淡いライトブルーの長袖ボタンダウンシャツに明るいベージュのストレートチノパン、穏やかな笑顔で手を差し出す)。神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツ、少し緊張しつつも礼儀正しく頭を下げる)。宮本彩(24歳・女性、ティール〜海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでゆるいポニーテール、二人の横で明るく微笑む)。 【構図】会議テーブルを囲む初対面の挨拶シーン。北村が立って神谷に手を差し出し、神谷が向かい合って一礼する。宮本がその横で見守る。背景に奥壁の2連窓下へ横一列で並ぶ薄いグレーのメラミン天板デスク2台とキャスター付きホワイトボード。壁のコルクボードに活動の予定表や写真が色数を抑えたピンで実用的に留められている。 【小物】設定画像に合わせ、北村のデスクにデスクトップPC+クリアファイルの束+波模様のマグカップ。宮本のデスクに白いノートPC+マスタードイエローのリングノート。グレーの4段スチールラックに白・水色・グレーのファイルボックス。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:高松市内の雑居ビル2階、約7×9mのやや横長なワンルームNPO事務所。奥壁の2連窓下に横一列で並ぶ薄いグレーのメラミン天板の中古事務デスク2台、約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠)、オーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚(+右壁際に重ねた予備1脚)、奥壁に2つの引き違い窓(白アルミサッシ、自然光+高松の中層ビル街)、コルクボードに色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード、グレーのスチールラック4段。 【色調】窓からの初夏の明るい自然光、彩度やや低め、質素だが活気のある小さなNPO事務所の空気。北村の温かさと神谷の緊張が対比する。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、高級なオフィス家具・広い空間。
せとうちマーレブルの事務所は、高松市内の雑居ビルの2階にあった。窓の下に横一列で並んだ中古のデスク、キャスター付きの大きなホワイトボード、オーク調の会議テーブルとスタッキングチェア。壁のコルクボードには活動の予定表や写真が実用的に留められている。少ない人数と予算で工夫してやっている空気が、部屋いっぱいに漂っていた。



北村裕。62歳。温かく丁寧な口調で、初対面の神谷にも気負わせない空気を持っている。社長の旧友というだけでなく、長年この土地の観光に情熱を注いできた人なのだと、すぐに分かった。テーブルの上に出された温かいお茶に手を伸ばしながら、北村が笑った。


やりたいことは山ほどある
お茶が一巡したところで、神谷は本題に入った。

西園寺から学んだ第一原則を、そのまま口にした。すると、北村の目が輝き始めた。困りごとを語ろうとしているのに、話は自然と瀬戸内の魅力のほうへ流れていく。



北村の声のトーンが上がり、身振りが大きくなるたびに、神谷は気づいた。この人は「困っている」のではなく、「伝えたいものが溢れている」のだ。困りごとの裏に、瀬戸内への深い愛情がある。
宮本が、北村の熱弁を受けて現実を整理し始めた。



北村が肩を落とす。宮本が隣で小さくうなずく。テーブルの上に、少し色褪せた小冊子が置かれていた。表紙の海の写真はきれいだが、中を開くと文字が小さく、レイアウトも読みづらい。これが「3年前に丸投げで作った」ものだ。
まず、書き出すところから



3人がホワイトボードの前に集まった。神谷がマーカーを手に取り、ボードの中央に縦線を引いた。左側に「今あるもの」、右側に「足りないもの」と書く。






【種類】概念図(二列比較表)。人物は描かない。 【構図】中央の縦線で左右に分割された表形式。 ・左列タイトル「今あるもの」(緑系の背景): - 観光スポットの写真(スマホ撮影) - パンフレット小冊子1種類(3年前作成) - ホームページ1つ(更新なし) - 北村の知識・人脈・地域ネットワーク - 地元行政との連携実績 ・右列タイトル「足りないもの」(赤系の背景): - 県外への発信手段(SNS・動画) - ホームページの更新体制 - 訪問者の声(フィードバック) - ターゲット層の明確化 - デジタル活用のノウハウ 各項目の左にシンプルなチェックマーク(左列)またはバツマーク(右列)のアイコン。 【補助】図の上部に『せとうちマーレブルの現状整理』のタイトル。下部に『まず書き出す。全体を見渡してから、どこに集中するかを決める』のキャプション。 【色調】白〜ごく薄いグレーの背景。左列=緑系、右列=赤〜オレンジ系。フラットイラスト調、紙的なテクスチャ感。 【避ける】人物、実在の組織名、写真風の質感、過度に複雑な装飾。
ホワイトボードが少しずつ埋まっていく。北村がマーカーを手に取り、宮本がノートに写し、神谷が話を整理して追記していく。小さな事務所に、チームの空気が生まれた瞬間だった。



📌 覚えるポイント
- 新しい現場では、自分の知識を持ち込む前に、相手の話をじっくり聞いて現状を把握することが大切
- 課題の棚卸しの基本は「今あるもの」と「足りないもの」を書き出して整理すること。書き出すだけで「何もない」が「あるものはある」に変わり、どこに集中すべきか見えてくる
- 相手が「やりたいこと」を語るとき、その裏にある「困っていること」を見つけ出す——「困りごとから始める」の実践
📖 覚える用語
- ぴっぴ
- 香川の讃岐弁(幼児語)で「うどん」の意味。主に祖父母世代が子どもや家族に対して使い、若い世代の日常会話では「うどん」が一般的。
- 課題の棚卸し
- 「今あるもの」と「足りないもの」を書き出して整理すること。全体を見渡してから優先順位をつけ、どこに集中するかを決めるための基本的なアプローチ。
- 到着までの所感
- 神戸港を深夜に出航し、早朝に高松東港へ到着。船内のうどん売店で、うどんを指す地元の言葉「ぴっぴ」を教わった。用語も含め、まず土地のことから覚えていく。
- せとうちマーレブルの現状
- スタッフは北村さん(代表理事)と宮本さんの実質2人。発信物が古いまま止まっているのは、予算を惜しんだからというより、作ったあとに手を入れる担当が決まっていなかったためだと見ている。外に任せて仕上げて終わりにすると、数年で中身が現実からずれる——うちのECサイトの更新にも通じる話だと感じた。この2人という規模が、これからどの打ち手を選べるかの前提になる。
- 困りごとの整理
- 棚卸しの進め方として、こちらが一方的に聞き取るのではなく、ホワイトボードを3人で囲み、北村さんご自身にもマーカーを持っていただいた。「困っていることは」と尋ねると話が魅力の紹介のほうへ流れてしまうため、まず存分に語っていただいてから書き出して分類する、という順序が有効だった。両側を見比べると、「今あるもの」は年月をかけないと手に入らないもの、「足りないもの」は外から補えるものに、はっきり分かれている。一覧は事務所のホワイトボードに残し、いつでも追記できる状態にしてある。
- 次にやること
- 「足りないもの」の中から優先度を決め、最初に取り組む1つを絞る。全部やろうとしないで、まず1つに集中する——導入編の原則をここでも実践する。
