観光マーケティング実践コース
~第1話 スーパーと観光は、何が違うのか~
在籍出向で香川に渡った神谷は、NPO法人せとうちマーレブルの北村裕と宮本彩に出会った。瀬戸内の魅力を語り始めると止まらない北村、冷静に現実を整理する宮本。3人でホワイトボードに「今あるもの」と「足りないもの」を書き出し、困りごとの整理を始めたところだった。
地元の人と旅行者で、見え方が違う
【シーン】初夏の高松市内の商店街アーケード、午前。神谷と宮本が街歩きをしながら観光の現場を体感する場面。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビー系のシングル2つボタンスーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、黒い短髪、興味深げにパンフレットラックを見つめる)。宮本彩(24歳・女性、ティール〜海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、ダークネイビーの細身パンツ、白いスニーカー、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでポニーテール、片手にスマホ、歩きながら神谷に説明する)。 【構図】アーケードの下を二人が歩いている。手前に観光案内所のパンフレットラック(色とりどりの小冊子が並ぶ)。奥に地元の店先の手書きPOPやのぼり旗、讃岐うどん屋の暖簾が見える。通りには数人の匿名シルエットの通行人。 【小物】パンフレットラックのカラフルな観光パンフレット(文字は抽象表記)、店先の手書きPOP(読めない程度に示唆)、のぼり旗。 【ロケーション整合】一般的な高松市内の商店街アーケード。半透明の屋根から明るい日差し、タイル張りの歩行者通路、両側に地元商店が並ぶ。特定施設名は描かない。ロケーション設定画像なし(一般的な商店街の描写)。 【色調】アーケードを透過する初夏の明るい日差し、彩度やや高め、活気ある商店街の日常感。神谷の「スーパーと似ている」という発見の空気。 【避ける】読める実テキスト、特定店舗名、商標、実在ロゴ。匿名シルエット以外の他人物の顔。
着任2日目の朝。前日にホワイトボードへ書き出した「足りないもの」のリストが頭に残っていた宮本が提案した。


高松市内の商店街を歩く。半透明のアーケードの屋根から初夏の日差しが降り注ぎ、タイル張りの通路に柔らかな影が落ちていた。手書きPOPやのぼり旗が両脇に並び、どこかのうどん屋からだしの香りが漂ってくる。宮本が歩きながら、現場のエピソードを語ってくれた。



歩きながら、神谷はところどころで足を止めた。土産物店の店先に並ぶ和三盆のパッケージ。手作りのオリーブ石鹸。直島のアートポスター。まるやまマートの商品棚と同じように、棚の配置や見せ方に工夫が凝らされている。


お店はお客様が来てくれる。観光は?
アーケードの先に、観光案内所の看板が見えた。入口横にパンフレットラックが設置されている。屋島、栗林公園、小豆島——色とりどりの冊子が整然と並んでいた。神谷は見覚えのある光景に足を止めた。





認知→興味→比較→購入→継続
【シーン】せとうちマーレブルの事務所、午後。街歩きから戻った神谷と宮本が、西園寺にオンラインで報告する場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_meeting.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png、kagawa/characters/西園寺設定画像.png、kagawa/characters/北村裕設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツ、ネクタイを締め直した姿、会議テーブルの手前に座り気づきを報告する真剣な表情)。宮本彩(24歳・女性、ティール〜海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでポニーテール、神谷の隣に座りマスタードイエローのノートを開いてメモ)。ノートPC画面越しに西園寺遥(30歳・女性、ベージュのジャケット、あごラインストレートボブ、細フレーム眼鏡、穏やかに頷く)。北村裕(62歳・男性、ライトブルーのボタンダウンシャツ、銀灰色のメタルフレーム眼鏡、横で腕を組んで聞いている)。 【構図】会議テーブルを囲む4人(うち1人はPC画面内)。神谷と宮本が手前に座り、ノートPCが正面に開かれて画面に西園寺。北村がテーブルの端でスタッキングチェアに座り耳を傾ける。背景に約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠)。 【小物】設定画像に合わせ、テーブル上にノートPC、宮本のマスタードイエローのリングノートとペン、北村の波模様のマグカップ。壁のコルクボードに色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:約7×9mのやや横長なワンルーム、オーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚、奥壁の2連窓下に横一列で並ぶ薄いグレーのメラミン天板の中古事務デスク2台、キャスター付きホワイトボード、奥壁に引き違い窓(白アルミサッシ、自然光)、コルクボード、グレーのスチールラック4段。 【色調】窓からの午後の自然光、彩度やや低め、質素な事務所に学びの緊張感が漂う。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、広いオフィス描写。
事務所に戻った神谷と宮本は、西園寺にオンラインで報告した。北村も横で聞いている。神谷が街歩きで気づいた「入口の違い」を伝えると、西園寺が少し考えてから口を開いた。


西園寺がノートPCの画面越しに、穏やかに頷いた。そして、導入編で学んだ枠組みを持ち出した。



認知→興味→比較→購入→継続——5つの段階を追うごとに、顧客の数は少しずつ絞られていく。導入編でWebマーケティングの一環として学んだこの枠組みは、観光にもそのまま当てはまる。ただし、観光ではその入口——認知のハードルが、小売とは比較にならないほど高い。
【種類】概念図(縦型ファネル図)。人物は描かない。 【構図】上から下へ段階的に狭くなるじょうご(漏斗)型の5段構成。 ・第1段(最上段・最も広い):認知 —「知る」(水色) ・第2段:興味 —「気になる」(青) ・第3段:比較 —「くらべる」(紺) ・第4段:購入 —「決める」(オレンジ) ・第5段(最下段・最も狭い):継続 —「また来る」(赤系暖色) 各段の右側に右向きの小さな矢印と「人数が絞られる」の示唆。ファネル全体がじょうご(漏斗)のシルエットを形成。 【補助】図の上部に『5ステージ(顧客ファネル)』のタイトル。下部に『上から下へ、段階ごとに顧客の数が絞られていく構造。漏斗(じょうご)の形に似ているため「ファネル」と呼ばれる』のキャプション。 【色調】白〜ごく薄いグレーの背景。5色のグラデーション(水色→青→紺→オレンジ→赤系暖色)でステージを区別。フラットイラスト調、紙的なテクスチャ感。 【避ける】人物、実在サービスのロゴ・UI、写真風の質感、過度に複雑な装飾。



じょうごみたいに絞られる

横で聞いていた北村が、率直に首をかしげた。西園寺は笑顔で答えた。




北村が腕組みを解いて、テーブルの上のマグカップに手を伸ばした。ひと口飲んで、ゆっくりと言葉を続けた。



入口が違うだけで、流れは同じ
話が一段落したところで、神谷はふと思いついた。街歩きで感じた「スーパーと観光の違い」を、ファネルの図で見比べたらもっと分かりやすくなるのではないか。


【種類】概念図(比較ファネル図)。人物は描かない。 【構図】左右に並ぶ2つのファネル(じょうご)図。 ・左:「スーパー」のファネル — 認知の段が極めて小さく(地域住民はすでに知っている)、興味〜継続の段が相対的に大きい。全体的に短く平らなじょうご。ラベル:『近所の人はすでに知っている』。 ・右:「観光」のファネル — 認知の段が圧倒的に大きく(遠方の人に知ってもらう必要がある)、下の段に行くほど急激に狭くなる。全体的に長く深い逆三角形。ラベル:『存在を知らない人がほとんど』。 ・「認知」の段に赤い強調マーク。2つのファネルの間に『← 入口の高さが違う →』のラベル。 【補助】図の上部に『スーパーと観光のファネル比較』のタイトル。下部に『入口が違うだけで、流れは同じ。観光は「認知」のハードルが桁違いに高い』のキャプション。 【色調】白〜ごく薄いグレーの背景。左ファネル=緑系、右ファネル=青系。「認知」の段に赤い強調色。フラットイラスト調、紙的なテクスチャ感。 【避ける】人物、実在サービスのロゴ・UI、写真風の質感。
【シーン】せとうちマーレブルの事務所、同じ午後の後半。神谷がホワイトボードにファネル図を描いて説明する場面。 【ロケーション固定】kagawa/locations/kagawa_13_marble_office に厳密準拠。第一参照=angle_board.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png、kagawa/characters/宮本彩設定画像.png、kagawa/characters/北村裕設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビーのスーツ、ホワイトボードの前に立ちマーカーを手に持って説明する)。宮本彩(24歳・女性、ティール〜海色のライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、暖色系ダークチェスナットブラウンのミディアムヘアを青緑色のシュシュでポニーテール、ノートにメモしながら「認知のところがない」と指摘する表情)。北村裕(62歳・男性、ライトブルーのシャツ、銀灰色の眼鏡、ホワイトボードの絵をじっと見つめ「知る」で止まっとると呟く)。 【構図】設定画像のキャスター付きホワイトボードの前に神谷が立つ。ボードに赤と青のマーカーで2つのファネル図が並ぶ。左に「スーパー」のファネル(認知が極小で興味以降が大きい)、右に「観光」のファネル(認知が圧倒的に大きく下段に行くほど急激に細くなる)。「認知」の段に赤い丸印。宮本と北村がテーブルに座って見上げている。 【小物】設定画像に合わせ、ホワイトボード上のマーカー3色(赤・青・黒)とイレイサー。テーブル上にノートPC(西園寺の画面)、宮本のノート。 【ロケーション整合】kagawa_13_marble_office:約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠)、オーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア、奥壁に引き違い窓、コルクボード。 【色調】午後の自然光+室内灯、彩度やや低め。ホワイトボードの赤と青のマーカーが画面のアクセントカラー。北村の静かな自覚の瞬間。 【避ける】読める実テキスト(ファネル内のラベルは抽象的な手書き線で示唆)、商標、他人物。
神谷はホワイトボードの前に立ち、赤と青のマーカーを手に取った。左にスーパーのファネル、右に観光のファネルを並べて描く。スーパーのファネルは認知の段が小さく、興味以降が相対的に大きい。一方、観光のファネルは認知の段が圧倒的に大きく、下に行くほど急激に狭くなっていた。




北村がホワイトボードの絵をしばらく黙って見つめていた。ファネルの「認知」の段を指で辿り、そして、ぽつりと言った。

短い一言だった。だが、その静かな自覚が、この部屋にいる全員の空気を変えた。せとうちマーレブルの最大の課題は、「知ってもらうこと」——認知のハードルを越えることだった。



📌 覚えるポイント
- スーパーは「お客様が来てくれる」。観光は「知ってもらうところ」から始まる——この入口の違いがマーケティングのすべてに影響する
- 5ステージのファネル:認知→興味→比較→購入→継続。顧客が初めて知ってからリピーターになるまでの段階的なプロセス
- 観光では5ステージの最初の「認知」のハードルが桁違いに高い。この街の存在すら知らない人に知ってもらうことが、観光マーケティングの出発点
- 課題がどこにあるか分かれば、そこに集中すればいい。「全部やらない」という判断こそが、限られたリソースで成果を出す鍵
📖 覚える用語
- 5ステージ(認知→興味→比較→購入→継続)
- 顧客が商品やサービスを知ってから買い、使い続けるまでの段階的プロセス。各段階で顧客数が絞られていく構造を持ち、漏斗(じょうご)の形に似ていることから「ファネル」とも呼ばれる。
- 観光ファネル
- 5ステージを観光に読み替えたもの。知る→気になる→くらべる→決める→また来る。小売と違い、最初の「認知」段階のハードルが圧倒的に高いのが特徴。
- 認知(ファネルの第1ステージ)
- 顧客が商品・サービス・地域の存在を初めて知る段階。観光では「この場所を知っている」ことが来訪の前提条件となるため、ここが最大のボトルネックになりやすい。
- ファネル(漏斗)
- マーケティングにおける顧客行動の絞り込みモデル。上が広く下が狭いじょうご型の図で表し、各段階を通過するたびに人数が減少することを視覚化する。英語のfunnel(漏斗・じょうご)が語源。
- 街歩きで確かめたこと
- 宮本さんの案内で高松市内の商店街と観光案内所を歩いた。パンフレットラックに並んでいるのは、すでにこの街まで来た人の目に触れるものばかりで、県外へ届く経路は見当たらない。案内所は昨年リニューアル済みだが、実際に冊子を手に取る人は多くないとのこと。
- 現状の数字
- ホームページを見る人は月200人ほどで、県外からはほとんどない。北村さん自身の言葉で「うちは『知る』のところで止まっとる」と現状を確認できた。
- 今日決めたこと
- 認知→興味→比較→購入→継続の5段のうち、まず「認知」の1段だけに力を集中する——この優先順位でチームの認識を揃えた。売り場に来た人への見せ方は後回しにして、手を広げない。
- 次にやること
- 「知ってもらう」ハードルをどう越えるか、具体的な手段を洗い出す。その前段として、誰に知ってもらうのかを決めるところから着手する。
