AI×動画制作コース
~第4話 最初の3秒で心をつかむ~
宮本の大学時代の友達2人も加わり、さぬき体験工房でうどん踏み体験の撮影と、屋島山上・やしまーるでの風景撮影を1日がかりで敢行した。仮称だった「うどんダンダンダンス」は、この日の撮影で「さぬきビート」に改名した。スマートフォン1台+三脚+ピンマイクの最小構成で、体験中の親子の笑顔や友達の生き生きしたリアクションなど約200カットの素材が集まった。高価な機材がなくても、現場を知る人と一緒なら十分な素材が撮れると実感した。
200カットの素材を前に
【シーン】せとうちマーレブル事務所で横一列に並ぶデスクのうち右側(宮本側)。PCモニター画面に3つの候補カット(踊る子どもと友達、やしまーるの回廊の光、うどん生地のスローモーション)が並ぶサムネイル一覧が映り、神谷と宮本が並んで画面を見比べている。画面の端にオンライン通話ウィンドウがあり、西園寺がこちらに語りかけている。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_desk.png、第二参照=angle_meeting.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/西園寺設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳・男性、ネイビー系スーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、黒い短髪、立ったままモニターを覗き込む)、宮本彩(24歳・女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、ダークチェスナットブラウンのポニーテール、青緑色のシュシュ、椅子に座りマスタードイエローのリングノートを膝に開いている)、オンライン通話ウィンドウ内に西園寺遥(30歳・女性、ベージュのジャケット、あごラインストレートボブ、細フレーム眼鏡、バストアップ、穏やかな表情でこちらに語りかけている)。 【構図】宮本のデスク正面からの目線高視点。手前に2人の背中、奥にPCモニター画面。モニター上の画像は抽象的に色面と形だけ示す。 【小物】白ノートPC、マスタードイエローのリングノート、付箋付きサブモニター、ペットボトルの水。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、キャスター付き自立式ホワイトボード、簡易ミーティングスペース、奥壁の引き違い窓2連から自然光、右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】午前の自然光。白・グレー基調の室内に窓からの柔らかい光が差し込む。モニター画面がやや明るく、人物はシルエット気味。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
撮影から2日後の朝。せとうちマーレブルの事務所に出勤した神谷は、PCのフォルダを開いてため息をついた。撮影素材のサムネイルが、画面いっぱいに並んでいる。さぬきビートで踊る子ども、友達2人の生き生きしたリアクション、やしまーるの回廊に差し込む午後の光、うどん生地がゆっくり伸びるアップ。どれも撮った瞬間の興奮が蘇る素材ばかりだ。一つひとつに、あの日の空気が詰まっている。


宮本のデスクの横に置いたノートPCの画面で、オンライン通話の西園寺が口を開いた。



宮本がうなずいた。

西園寺の言う「フック(冒頭3秒)」とは、動画の最初の3秒で視聴者の指を止めるカットのことだ。SNSの時代、動画は冒頭で見るか見ないかが決まる。だからこそ、いちばん強い映像を先頭に置く。
冒頭3秒のフック選定
【種類】概念図(比較レイアウト)。人物は描かない。 【構図】横並びの3枚のフレーム。左から「踊る人々のシルエット+音符」「回廊に差し込む光のライン」「伸びるうどん生地の曲線」。各フレームの下に①②③の番号。中央上部に「冒頭3秒の候補」のタイトル。①のフレームだけ太い枠線で囲まれ、選ばれたことを示す。 【補助】タイトル「冒頭3秒フック候補の比較」 【色調】白背景にティール系のアクセント。選ばれた①はオレンジ系の枠。フラットデザイン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
3人は200カットの中から、冒頭3秒の候補を3つに絞った。
候補①は、さぬきビートで子どもと友達2人が音楽に合わせて踊る瞬間。候補②は、やしまーるの回廊に差し込む午後の光。候補③は、うどん生地がゆっくり伸びるスローモーションだ。


ペルソナの「林田家」とは、阪神間在住の30代夫婦と4歳の子どもの家族像だ。チームが動画の届け先として設計した人物像で、今回のファミリー向け動画の出発点になっている。


冒頭カットが決まった。子どもが音楽に合わせて踊り出す瞬間からスタートし、友達2人が一緒にリズムに乗る映像へつなぐ。体験工房の粉が舞う空気感、お母さんが笑いながら見守る表情——台本の構成に沿って、残りの素材を並べていく。
神谷は無料の動画編集アプリを開き、素材をタイムラインに並べた。カットの長さは台本どおり3秒から12秒まで幅を持たせた。冒頭は短くインパクトを出し、体験の工程はやや長めに見せる。長すぎると飽きるし、短すぎると何が映っているかわからない。つなぎ方もカット(ぱっと切り替わる)とディゾルブ(ゆっくり溶けるように切り替わる)で印象がまったく違う。


サムネイルは動画の表紙
【種類】概念図(サムネイル構成)。人物は描かない。 【構図】中央にスマートフォンの画面フレーム。画面内にサムネイルのレイアウト要素が配置されている:上部にキャッチコピー用のテキストエリア(「踊って打つ、親子うどん」とごく小さく示唆)、中央に笑顔のシルエット(抽象化した丸と曲線のみ)、下部にロゴエリア。フレームの横に矢印で「文字の大きさ」「配色」「配置」の3つのチェックポイントが吹き出しで示される。 【補助】タイトル「サムネイルの3つのチェックポイント」 【色調】白背景、ティール+オレンジのアクセント。明るくポップなフラットデザイン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
60秒の編集にひと段落がついたところで、西園寺が次のステップを切り出した。



神谷がプロンプトを入力すると、AIが5つの案を返した。「踊る!打つ!食べる!親子うどん旅」「足で踏むから美味しくなる、子どもの体験」「踊って打つ、親子うどん」「家族でリズムに乗る讃岐体験」「3歳から踊れる、さぬきビート」。チームで比較する。



宮本がCanvaを開き、背景にさぬきビートの子どもの笑顔カットを配置した。その上にキャッチコピー「踊って打つ、親子うどん」を白い太文字で載せる。小冊子づくりのときは神谷の画面を横から覗き込むばかりだった宮本が、今日は自分でマウスを握っていた。メニューを探して手が止まることもあるが、どこに何を置くかは自分で決めている。


文字に薄い黒の影をつけると、粉の白さと文字が分離して読みやすくなった。さらに西園寺が問いかける。



宮本がスマートフォンに転送して暗い部屋を想定しながら確認すると、キャッチコピーの文字がやや小さかった。サイズを上げ、配色をもう少し明るいトーンに調整して、ようやくバランスが取れた。
15秒版という別の設計図
【種類】概念図(尺比較)。人物は描かない。 【構図】上下2段のタイムラインバー。上段は60秒版:4つのブロックに分かれ「フック」「体験」「風景」「CTA(行動を促すボタン)」とキャプション。下段は15秒版:1つの大きなブロック「1メッセージ」のみ。左端に再生ボタンのアイコン、右端にタイマー表示。上段の矢印で「起承転結のストーリー」、下段の矢印で「1つのメッセージだけ」と補足。 【補助】タイトル「60秒版と15秒版の構成の違い」 【色調】白背景、ティール系とオレンジ系の2色。フラットデザイン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
60秒版の編集が形になってきたところで、西園寺がもう一つの展開を提案した。



60秒版は「さぬきビートの体験→屋島の風景→親子の笑顔→最後に『詳しくはこちら』と次の行動を案内する」とストーリーを展開できる。しかし15秒版では、たとえば「さぬきビートで子どもが踊る」の一点だけに絞る。フック→体験の瞬間→リアクション、それだけで15秒が終わる。


神谷は、フック・サムネイル・尺の3つが連動していることに気づいた。15秒版のフックは60秒版と同じでも、その後の展開がまったく違う。サムネイルも、15秒版は「この一瞬を見たい」と思わせる切り取り方が求められる。同じ素材から複数の動画を作るというのは、ただの使い回しではなく、それぞれが別の設計図を持つということだ。
香川に来る前の自分がスクロールしていたら
作業が終わり、宮本が先に帰った後の事務所で、神谷はひとり完成したサムネイルをスマートフォンの画面で眺めていた。窓の外はもう暗くなりかけている。「踊って打つ、親子うどん」の文字。その背景に、粉まみれの子どもの笑顔。あの撮影の日、台本にはなかった瞬間が、いまサムネイルの中で動画の顔になっている。
冒頭3秒の選び方、サムネイルの作り方、15秒版の構成。今日学んだことのすべてが、1つの問いに帰着していた。「この動画は、届けたい相手の目に飛び込むか」技術を覚えることではなく、相手の目線で考えること。それが動画の設計の出発点なのだと、神谷は窓の外の暗い空を見ながら静かに確信した。次は、この素材にテロップを載せる工程が待っている。
📌 覚えるポイント
- 動画の最初の3秒を「フック」と呼ぶ。スクロールの指を止めるいちばん強いカットを冒頭に置く
- フックの選定は自分の好みではなく、ペルソナの視聴状況から逆算して決める
- サムネイルは「動画の表紙」。再生ボタンを押す前の勝負で、文字の大きさ・配色・配置が鍵になる
- サムネイルの確認はPCの大画面ではなく、ペルソナの視聴環境(スマートフォン・暗い部屋)で行う
- 60秒版と15秒版では構成がまったく違う。15秒版は「1メッセージ1動画」で伝えたいことを1つに絞る
- フック・サムネイル・尺はすべて連動している。同じ素材でもターゲットと尺に応じて設計を変える
📖 覚える用語
- フック(冒頭3秒)
- 動画の最初の3秒で視聴者の指を止めるカット。SNSのタイムラインでは冒頭数秒で見るか見ないかが決まるため、再生を続けてもらえるかどうかを左右する
- サムネイル
- 動画の「表紙」にあたる1枚の画像。タイムラインや検索結果に表示され、再生するかどうかの判断材料になる。キャッチコピー・文字の大きさ・配色・配置を工夫して「指を止める表紙」を作る
- 冒頭3秒のフック選定
- 冒頭3秒のカットに「さぬきビートで子どもが踊る瞬間」を選定。ファミリー層のペルソナが夜にスマートフォンを開く状況を想定し、子どもの笑顔がいちばん指を止めると判断しました。
- サムネイル制作
- サムネイルのキャッチコピーはAIに5案出してもらい、「踊って打つ、親子うどん」に決定。Canvaで文字と配色を調整し、暗い環境のスマートフォン画面でも読みやすいデザインに仕上げました。
- 15秒ショート動画版の制作方針
- 60秒版に加えて15秒のショート動画版も並行して作ります。15秒版は「さぬきビートで子どもが踊る」の一点に絞り、興味を持った方が60秒版に進む導線にします。
