AI×動画制作コース
~第5話 AIが文字を起こし、人がテロップにする~
約200カットの撮影素材から、冒頭3秒のフックに「さぬきビートで子どもが踊る瞬間」を選定した。サムネイルのキャッチコピー「踊って打つ、親子うどん」もAI案から決定し、15秒ショート動画版の構成まで設計した。
AI文字起こしの驚きと落とし穴
【シーン】せとうちマーレブル事務所で、AI文字起こしの結果をPCモニターで確認している場面。テキストの中に誤変換箇所が赤でハイライトされている。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_desk.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。 【人物】神谷悠馬(27歳男性、濃紺のシングル2つボタンスーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、椅子に座ってモニターを見つめる)、宮本彩(24歳女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、隣に立って画面を指差している)。 【構図】北村のデスク側のPCモニターを中心に、2人の上半身をやや斜め後方から。モニター画面にテキストが並び、3箇所の赤いハイライトが見える。 【小物】黒いPCモニター、黒いキーボード、宮本のマスタードイエローのリングノートがデスク端に置かれている、波模様のマグカップ。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、黒いメッシュバックチェア、奥壁の引き違い窓2連から午前の自然光、右壁のグレーのスチールラック4段、キャスター付き自立式ホワイトボード。 【色調】午前の自然光ベース。白・グレー基調の室内にモニター画面の青白い光。窓から柔らかい光が差し込む。 【避ける】読める実テキスト(モニター上のテキストは色面と赤ハイライトのみで示唆)、商標、実在ロゴ、他人物、写真風の質感。
フックとサムネイルが決まり、動画の全体構成が形になってきた。次は映像にテロップ(動画の画面に重ねて表示する文字。話した内容を文字にした字幕もこれに含まれる)を載せる工程だ。テロップを作るにはまず、映像に含まれる音声を文字に変換する必要がある。

神谷が現場で録った音声のファイルをツールにアップロードすると、進行バーが動き始めた。3分ほどで処理が完了し、画面にテキストがずらりと並ぶ。音声を自動でテキストに変換する——これがAI文字起こしだ。


神谷が変換結果を上から順に読み返していくと、3箇所で違和感に気づいた。「屋島」が「八島」に、「さぬき体験工房」が「讃岐体験工房」に、「やしまーる」が「屋島丸」になっている。どれも音は似ているが、表記がまったく違う。



一般的な単語は高い精度でテキスト化されるが、地域に固有の表記はAIが判断を誤りやすい。大部分は自動で速く処理できるが、固有名詞のように「正解が1つしかない」語だけは、必ず人の目で確認して修正する必要がある。

神谷と宮本で、変換結果を1行ずつ照合しながら修正していった。「八島」を「屋島」に、「讃岐体験工房」を「さぬき体験工房」に、「屋島丸」を「やしまーる」に。宮本がフィールドノートに控えておいた地名リストと見比べながら、ほかにも誤変換がないか丁寧に確認した。修正作業は15分ほどで終わった。
テロップの2つの役割
【種類】概念図(テロップの役割比較)。人物は描かない。 【構図】左右2分割。左パネルに「伝える」のラベルとスピーチバブル+テキスト行のアイコン(ナレーションの内容をそのまま文字にすることを示唆)。右パネルに「強める」のラベルと拡大文字+インパクトマークのアイコン(キーワードだけを大きく表示することを示唆)。中央に双方向矢印と「映像ごとにバランスを決める」の文言。中央下部に「時に矛盾する」の注釈。上部にタイトル「テロップの2つの役割」。 【補助】左パネル下に「音声オフでも意味がわかる」、右パネル下に「映像のインパクトを増幅する」の補足。 【色調】白背景、ティール系とオレンジ系の2色。フラットデザイン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
固有名詞の修正が終わり、正確なテキスト原稿が完成した。次はこの原稿をもとに、映像にテロップを重ねるデザイン作業に入る。まず神谷が試したのは、その原稿をほぼそのままテロップにする方法だった。音を消しても動画の意味が伝わるように、話し言葉を全文テキスト化して画面下部に載せた。


再生してみると、画面の下半分がテロップで埋まり、うどんを踏む子どもの表情や足元の動きがほとんど見えない。文字を読むことに意識が引っ張られて、映像そのものの迫力が薄れてしまう。

今度は「さぬきビート」「親子で踏む」といったキーワードだけを大きなテロップにした。映像のインパクトは増したが、何を言っているのかがまったく伝わらない。




テロップには「伝える」と「強める」の2つの役割がある。映像の内容や目的によって、どちらを優先するかが変わる。体験工房のさぬきビートの映像は、体験そのものの空気感を活かすために、テロップは控えめに「伝える」役割を中心にすることになった。
テロップデザインの試行錯誤
【種類】概念図(テロップデザイン比較)。人物は描かない。 【構図】2×2の4分割グリッド。左上「白文字+黒縁取り」(映像プレビュー風の四角に白文字テキスト、太い黒縁取り。ラベル「くっきり読めるが映像から浮く」)。右上「半透明の背景帯」(映像プレビュー風の四角の下部に半透明の黒帯、その上に白文字。ラベル「安定感はあるが映像が隠れる」)。左下「吹き出し風」(映像プレビュー風の四角にポップな吹き出し内テキスト。ラベル「華やかだが空気感が壊れる」)。右下「白文字+薄い影」(映像プレビュー風の四角に控えめな白文字+柔らかい影。チェックマーク付き。ラベル「映像を邪魔しない」)。 【補助】タイトル「テロップデザインパターンの比較」。右下パネルに「✓ 採用」のマーク。 【色調】白背景、ティール系とオレンジ系の2色。フラットデザイン。映像プレビュー部分はグレーの抽象的な面。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
方針が決まり、神谷がフォント(文字の書体)・文字サイズ・位置・背景の組み合わせを変えて、複数のパターンを試していく。


次に神谷が試したのは、画面下部に半透明の黒い帯を敷き、その上に白文字を載せるパターンだった。文字は読みやすく、安定感がある。しかし帯の部分が映像を覆い隠してしまい、うどんを踏む子どもの足元が見えなくなる。
3つ目は、文字をポップな吹き出しの中に入れるデザインだ。見た目は華やかだが、バラエティ番組のような印象になり、体験工房のリアルな空気感とは合わない。



神谷が白文字に薄い影だけを落としたパターンを適用した。映像を邪魔しないのに、文字はちゃんと読める。テロップが映像の一部のように自然に馴染んでいた。

チームで画面を確認し、体験工房の動画には「白文字+薄い影」が最も合うと全員が納得した。テロップの位置は、縦型のショート動画では画面の下端2割ほどにSNS側のボタンやキャプションが重なるため、そこを避けて画面中央よりやや下に固定し、うどんを踏む手元の映像と重なる箇所だけ、一時的に画面上部へ移動させることにした。

スマートフォンで見ると文字が小さい
【種類】概念図(PC/スマホ見え方比較)。人物は描かない。 【構図】左から右へ3つの画面を横並び。左にPCモニター枠(大画面に映像+テロップ、テロップは読みやすいサイズ。ラベル「PC画面:読みやすい」)。中央にスマホ枠(小画面に同じ映像+テロップが縮小され、テロップが極端に小さい。ラベル「スマホ:文字が小さい」+×マーク)。右にスマホ枠(文字サイズ1.5倍に拡大した改善後、テロップが読みやすいサイズ。ラベル「スマホ:1.5倍で読みやすい」+チェックマーク)。中央から右への矢印に「文字サイズ×1.5」。 【補助】タイトル「PCとスマホでのテロップ見え方比較」。下部に「最終確認はペルソナの視聴環境で」の注釈。 【色調】白背景、ティール系とオレンジ系の2色。フラットデザイン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
テロップのデザインが決まり、通しで動画を再生して確認した。PCの大画面で見る限り、テロップは映像に自然に馴染み、文字も読みやすい。チーム全員が「これで完成でいい」と思いかけたとき、宮本が画面を見つめたまま声を上げた。



神谷が自分のスマートフォンでも動画を再生してみた。PCの大画面では適切だったテロップが、スマートフォンの小さな画面では驚くほど小さい。目を凝らしてようやく読める程度で、これでは電車の中や暗い部屋で気軽に見る状況には耐えられない。


文字サイズを1.5倍に拡大し、改めてスマートフォンで再生した。今度はしっかり読める。PCの画面では少し大きく見えるが、実際の視聴環境で読みやすいことが最優先だ。


「テロップの修正、私がやります」
テロップの文字サイズとデザインが確定し、ひと段落ついたところで、宮本がまっすぐ神谷のほうを見て言った。



これまで動画の編集作業は神谷が中心で、宮本は横で意見を出す立場だった。しかし今日、AI文字起こしの固有名詞修正で自分の知識が役に立つと実感し、スマートフォンでの見え方にも自分で気づけた。「デジタルは神谷さんの担当」という線引きを、宮本が自分から超えようとしている。



宮本の目が明るい。テロップの修正という具体的な作業を通じて、動画制作のワークフローに一歩踏み込んだ瞬間だった。
📌 覚えるポイント
- AI文字起こしは音声を数分でテキストにでき、一般的な単語はほぼ正確に変換される。ただし誤りは地名・固有名詞のように「正解が1つしかない」語に集中するので、そこだけは必ず人の目で確認・修正する
- テロップには「何を言っているか伝える」役割と「映像の印象を強める」役割がある。この2つは時に矛盾するので、映像ごとにどちらを優先するかを決める
- 白文字+黒縁取り、半透明帯、吹き出し風——フォント・サイズ・位置は映像との相性で決まる。複数パターンを試して、映像を邪魔しないものを選ぶ
- PCの大画面で作ったテロップは、スマートフォンでは文字が小さすぎて読めないことがある。仕上げる前に、ペルソナの視聴環境で必ず確認する
- AI文字起こし→手動で固有名詞を修正→テロップデザイン→スマートフォンで確認。この流れをどこも飛ばさないことが、動画の読みやすさと正確さを支える
📖 覚える用語
- AI文字起こし
- 音声をテキストに自動変換する技術。一般的な単語は高精度にテキスト化できるが、地名や固有名詞などAIの学習データにない表記は、似た音の別の漢字に置き換えてしまうことがある。自動化の速さに、人間の目による修正を組み合わせて使う
- テロップ
- 動画に重ねる字幕のこと。「何を言っているか伝える」役割と「映像の印象を強める」役割の2つがある。映像の内容や目的によってどちらを優先するかが変わり、フォント・サイズ・位置を映像の雰囲気に合わせて選ぶ
- AI文字起こしの実施と固有名詞修正
- 撮影現場の収録音声をAI文字起こしツールで自動テキスト化しました。「屋島→八島」「さぬき体験工房→讃岐体験工房」「やしまーる→屋島丸」の3箇所に固有名詞の誤変換があり、宮本と確認しながら手動で修正しました
- テロップデザインの決定
- テロップのデザインを4パターン比較検討し、「白文字+薄い影」を採用しました。体験工房の映像の空気感を壊さない控えめなデザインです。テロップの位置は基本的に画面下部に置き、手元の映像と重なる箇所のみ上部に移動させます
- スマートフォンでの文字サイズ調整と宮本のテロップ修正担当
- 宮本の指摘でスマートフォンでの見え方を確認したところ、文字が小さすぎたため1.5倍に拡大しました。今後のテロップ修正作業は、固有名詞に詳しい宮本が担当します
