AI×動画制作コース
~第7話 どのSNSで、誰に届けるか~
公開前の権利チェックでBGM著作権・子どもの映り込み・収録音に残った市販曲の著作隣接権という3つの問題が同時に発覚した。AI音楽生成ツールSunoでオリジナル楽曲を制作し、映り込みカットを差し替え、公開前チェックリストを整備した。
どのSNSで届けるか
【シーン】せとうちマーレブル事務所で、神谷と宮本がPCモニターに映るオンライン通話画面を見ながら前川さくらと話している場面。モニターには3つのプラットフォーム名が抽象的に並んでいる。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_desk.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/前川さくら設定画像-黒髪.png。 【人物】神谷悠馬(27歳男性、濃紺のシングル2つボタンスーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、椅子に座ってモニターを見つめている)、宮本彩(24歳女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、メモを取りながらモニターを見ている)。モニターのオンライン通話画面に前川さくらの顔が映っている。 【構図】宮本のデスク側から斜めに、2人の背中越しにモニター画面を捉える。モニターに前川の通話画面と3つのプラットフォーム名の抽象的なアイコンが並ぶ。 【小物】白ノートPC、宮本のマスタードイエローのリングノート、黒いスマートフォン、波模様のマグカップ。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光)+窓横のコルクボード、右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】午前の自然光ベース。白・グレー基調の室内。モニター画面の明るい光がデスク周りを照らす。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
権利の問題をすべて解決し、動画はようやく公開できる状態になった。Sunoで生成したオリジナルBGMが載り、テロップも修正済みだ。15秒ショート版と60秒フル版の両方が完成している。あとは投稿するだけだ。しかし、肝心の「どこに出すか」がまだ決まっていなかった。SNSに投稿すること自体は決まっている。問題は、どのプラットフォーム(動画や写真を投稿できるサービス)を主戦場にするかだ。


前川さくらとのオンライン通話がつながった。前川は現在もまるやまマートの駅前店でSNSとLINEの発信を担当している。店舗のSNSアカウントを日常的に運用している実務経験者だ。事務所にいた北村代表理事もデスクから画面を覗き込んでいる。完成した動画を画面共有で見てもらい、15秒ショート版と60秒フル版があることを伝えると、前川が3つのプラットフォームの特性を整理してくれた。



【種類】概念図(比較表)。人物は描かない。 【構図】横3列の比較表レイアウト。左列「Instagram Reels:おすすめ+検索、プロフィール回遊」、中列「TikTok:未知のユーザーへの発見」、右列「YouTube Shorts:ショートフィード+チャンネルへの入口」。各列の下部にペルソナ(林田家)の情報収集経路との対応を矢印で示す。Instagramは「子連れ旅の情報収集」、TikTokは「さぬきビートの発見」と接続。 【補助】タイトル「SNSプラットフォーム比較」、キャプション「届けたい相手と目的でプラットフォームを選ぶ」。 【色調】白背景にブルー・ピンク・赤の3色でプラットフォームを色分け。矢印はグレー。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。





以前ペルソナ(たった一人の理想の視聴者像)として設計した「林田家」の情報収集経路と照合してみた。阪神間に住む30代の子育て家庭は、Instagramで子連れ旅の情報を日常的にチェックしている。だからInstagram Reelsが主戦場だ。一方、TikTokはさぬきビートという体験を「まだ知らない人」に発見してもらうためのチャネルだ。同じ動画でも、プラットフォームによって届く相手が変わる。ペルソナの行動と照らし合わせることで、2つの役割がはっきり分かれた。
ハッシュタグ戦略
北村は「なるほどな」とうなずいて、自分の仕事に戻っていった。Instagram Reelsを主戦場にし、TikTokでまだ知らない人にも届ける。2つのプラットフォームが決まったところで、次は「どうやって見つけてもらうか」だ。宮本が自分からハッシュタグの提案を始めた。



宮本がハッシュタグ(投稿にタグをつけて検索されやすくする仕組み)の設計を自ら主導していた。以前は「撮影場所と現場の知識を出す」のが自分の役割だと言っていた宮本が、投稿の企画を自分から提案している。テロップ修正に手を挙げたのに続いて、SNS発信にも主体的に関わり始めていた。現場に足を運ぶ仕事から、投稿全体を設計する仕事へ。宮本のプロジェクトへの関わり方が、少しずつ変わっている。

前川の言葉に、宮本がうなずく。ハッシュタグは「見つけてもらう」ための設計だ。#さぬきビート は体験の名前を覚えてもらうためのタグだが、その名前を知らない人はそもそも検索しない。だから、ペルソナがふだん使っている #子連れ旅 のような一般的なタグを並べて、すでにある検索行動の側から拾ってもらう。英語タグは海外のユーザーへの入口だ。音楽と動きで構成されたコンテンツは、言語に依存しない。だからこそ、ハッシュタグさえ正しく設計すれば、言葉の壁を越えて届く可能性がある。広告を出すのとは違う。ハッシュタグは「検索される入口」として機能する。



多言語字幕とAIナレーション
プラットフォームの選定とハッシュタグ戦略が決まったところで、西園寺にも通話に加わってもらった。前川の「国境も越えるかもしれない」という言葉を伝えると、西園寺が具体的なアクションを提案してきた。



AI翻訳ツールに日本語のテロップテキストを入力すると、英語と中国語の字幕が数秒で生成された。15秒の動画に載せるテロップは3行しかない。手作業なら翻訳者に依頼して数日かかるところが、AIなら数秒で終わる。小冊子の多言語対応で学んだワークフロー(作業の流れ)の動画版だ。さらに西園寺が「AIナレーション(合成音声)も試してみましょう」と提案した。テキストを入力するだけで、自然な英語の読み上げ音声が生成される。


【種類】概念図(フロー図)。人物は描かない。 【構図】左から右への横フロー。「日本語テキスト」→「AI翻訳(英語・中国語)」→「固有名詞の手動修正」→「字幕ファイル完成」。AI翻訳のステップには吹き出しで「さぬき体験工房→Sanuki Experience Factory(誤)」「屋島→Yajima(誤)」の例を示す。手動修正のステップには「Sanuki Experience Workshop(正)」「Yashima(正)」と修正結果を示す。フローの下段に「AIナレーション」の分岐があり、「固有名詞のアクセントに限界あり → 字幕のみ採用」と注記。 【補助】タイトル「多言語字幕ワークフロー」、キャプション「AIは8割を速くする。残り2割は人がつなぐ」。 【色調】白背景にブルー系のフロー矢印。修正箇所は赤で強調、修正結果は緑。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
「Factory」と「Yajima」
西園寺の言葉どおり、確認は必要だった。生成された英語字幕をそのまま使えば速いが、「速い」と「正しい」は別の話だ。宮本が画面で英語字幕を一文ずつ読み始めた。現場の地名や施設の名前を知っている宮本だからこそ気づける間違いがあるはずだ。案の定、すぐに声を上げた。





字幕の固有名詞を手動で修正していく。「Sanuki Experience Factory」を「Sanuki Experience Workshop」に、「Yajima」を「Yashima」に直した。たった2か所の修正だが、この2か所を見逃したまま海外に出したら、香川の地名が間違って広まってしまう。AI文字起こしのときに「屋島」が「八島」になった問題と根は同じだ。音声認識でも翻訳でも、AIは一般的なパターンには強いが、地名や固有名詞のように「正解が1つしかない」ものには弱い。AIは全体の8割を速くしてくれるが、残りの2割は人がつなぐ必要がある。
続けて、AIナレーションも聞き直した。英語の読み上げは全体的に自然だったが、固有名詞のアクセントが不自然だった。「Yashima」の発音が英語のイントネーションに引きずられて、日本語の「やしま」とは全く違う音になっている。「Sanuki」の発音もどこか硬い。字幕なら目で読むだけだが、ナレーションは耳に入る。間違った発音が繰り返し聞こえることの影響は、字幕の誤字よりも大きい。


英語版のナレーションは見送り、字幕のみに切り替えた。字幕は修正すれば使えるし、ナレーションの固有名詞の読みも、読み上げ原稿の綴りを工夫したり読みを登録できるツールを使えば直せる。ただ、地名をひとつずつ確認して聞き直す時間が今はない。だから「字幕だけで十分に伝わる動画にする」という判断を下した。完璧を目指して止まるよりも、使える部分と使えない部分を切り分けて、現実的な方法で前に進む。

初投稿
【シーン】せとうちマーレブル事務所で、宮本がスマートフォンを手に持ち、投稿完了画面を見つめている場面。隣で神谷も画面を覗き込んでいる。窓の外はもう暗く、室内の照明が2人を照らしている。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_window.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】宮本彩(24歳女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、両手でスマートフォンを持ち、画面を見つめている。口元に安堵の微笑み)、神谷悠馬(27歳男性、濃紺のシングル2つボタンスーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、宮本の横から画面を覗き込んでいる。穏やかな表情)。 【構図】窓際に立つ2人を斜め前方から捉える。宮本のスマートフォン画面がわずかに光っている。背景の窓の外は暗く、室内灯とスマートフォンの画面の光が2人の顔を照らす。 【小物】宮本の黒いスマートフォン、窓辺に置かれた宮本のマスタードイエローのリングノート。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光)+窓横のコルクボード、右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】秋の夜。室内の暖色の照明とスマートフォンの画面光が2人の顔を照らし、窓の外は暗い。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
字幕の修正を終えた15秒ショート動画を、宮本が最終編集した。さぬきビートの足踏みシーン、さぬき体験工房で自然に踊り出す人たちの笑顔、Sunoで生成したテンポのいいBGM。冒頭の1秒で目を引き、15秒で完結する構成だ。画面下部に英語と中国語の字幕が表示される。固有名詞はすべて手動で修正済みだ。投稿テキストには日本語と英語のハッシュタグが設定されている。
投稿前に、前の話で作成した権利チェックリストを通す。BGMの利用規約、収録音の確認、出演者の撮影同意書、映り込みチェック。4つの項目をひとつずつ確認していった。すべてクリアだ。前回は公開直前に問題が3つ同時に見つかって慌てた。あの経験があるから、今はチェックリストという「仕組み」で対応できている。


金曜の夜。阪神間に住むペルソナの林田家が子どもの寝かしつけを終えて、「週末どこ行こう」とスマートフォンを開く時間帯だ。前川のアドバイスどおり、ターゲットの行動に合わせたタイミングで投稿する。宮本のスマートフォンにアップロードの進行バーが表示された。バーがゆっくり進み、100%に達した。「投稿完了」の表示が出る。
2人で画面を見つめた。さぬきビートの15秒ショート動画が、Instagram ReelsとTikTokに投稿された。再生数はまだ0。「いいね」もコメントもない、真っさらな状態だ。しかし、この動画には英語と中国語の字幕がついている。日本語の #さぬきビート と #子連れ旅、英語の #SANUKIBEAT、3つのハッシュタグが設定されている。プラットフォームを選び、字幕を整え、タイミングを計って投稿した。届く準備は、できている。
📌 覚えるポイント
- Instagram Reelsはおすすめと検索の両方から見つかりプロフィールまで見てもらいやすく、TikTokはおすすめ経由で未知のユーザーに一気に届き、YouTube Shortsはチャンネルの他の動画への入口になる。届けたい相手と目的でプラットフォームを選ぶ
- 体験名タグ(#さぬきビート)だけでは、その名前を知らない人に見つけてもらえない。ペルソナが実際に検索する一般タグ(#子連れ旅)と英語タグ(#SANUKIBEAT)を併記して、既存の検索行動と海外の検索の両方に引っかける
- 多言語字幕はAI翻訳で速く作れるが、固有名詞は必ず人が確認する。「さぬき体験工房→Sanuki Experience Factory」「屋島→Yajima」のような誤訳は、媒体が変わっても同じように起きる
- AIナレーションは便利だが、固有名詞の読みは初期設定のままだと崩れる。読みを登録できるツールなら直せるし、その手当てをする時間がないなら字幕で補えばいい。字幕の誤りは読み飛ばされるが、ナレーションの誤りは聞こえてしまう
- 「いつ投稿するか」も設計の一部。ペルソナがスマートフォンを手に取る時間帯に合わせて投稿する
- BGMの利用規約・収録音の確認・出演者の撮影同意書・映り込みチェックの4項目は、毎回の投稿前に通す。仕組みにしておかないと、急いでいる日に飛ばしてしまう
📖 覚える用語
- ハッシュタグ戦略
- SNS投稿にタグ(#記号+キーワード)をつけて、投稿を見つけてもらいやすくするための設計。どのタグを何本組み合わせるかを、届けたい相手の検索行動から決める。
- AIナレーション(合成音声)
- テキストを入力すると、AIが人の声に近い読み上げ音声を生成する技術。ナレーターを手配せずに多言語の音声を短時間で用意できる。一方で固有名詞の読みやアクセントは初期設定のままだと崩れやすく、字幕は目で読み飛ばせるがナレーションは耳に入るため、誤りがそのまま伝わってしまう
- SNSプラットフォームの選定
- さぬきビートの15秒ショート動画を、Instagram ReelsとTikTokに投稿しました。ペルソナの林田家がInstagramで子連れ旅の情報を検索しているため、Instagram Reelsを主戦場にしています。TikTokではまだ知らない人に見つけてもらうチャネルとして並行運用します
- 多言語字幕の付与と品質管理
- 英語と中国語の字幕をAI翻訳で生成しました。ただし固有名詞の誤訳(「さぬき体験工房→Sanuki Experience Factory」「屋島→Yajima」)が複数見つかり、すべて手動で修正しました。AIナレーションも試しましたが固有名詞の発音に限界があるため、英語版は字幕のみで公開しています
- ハッシュタグと投稿タイミングの設計
- 宮本が日本語の #さぬきビート と #子連れ旅、英語の #SANUKIBEAT を併記するハッシュタグ戦略を提案しました。投稿タイミングは金曜夜に設定し、ターゲット家庭が週末の予定を検討する時間帯に合わせています
