AI×動画制作コース
~第8話 さぬきビートが海を越えた日~
SNSプラットフォームの選定と配信戦略を練り、AI翻訳で英語・中国語字幕を生成して固有名詞の誤訳を手動修正した。宮本主導でハッシュタグ戦略(#さぬきビート / #子連れ旅 / #SANUKIBEAT)を設計し、金曜夜に合わせて権利チェックリストを通した15秒ショート動画をInstagram ReelsとTikTokに投稿した。再生数0の状態から「発信」が始まった。
一晩で桁が変わる
【シーン】せとうちマーレブル事務所で、宮本がスマートフォンの画面を見て驚いている場面。隣で神谷も画面を覗き込んでいる。スマートフォンの画面には抽象的な通知アイコンが複数並んでいる。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_desk.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。 【人物】宮本彩(24歳女性、ティールのライトウィンドブレーカー、淡いライトブルーのポロシャツ、立った姿勢でスマートフォンを両手で持ち、画面を凝視している。口が半開きで驚きの表情)、神谷悠馬(27歳男性、濃紺のシングル2つボタンスーツ、白シャツ、ネイビー無地ネクタイ、宮本の横から画面を覗き込んでいる。眉を上げた驚きの表情)。 【構図】宮本のデスク付近で2人が立ってスマートフォンの画面を見ている。やや斜め前方から、2人の表情とスマートフォンの画面が見える角度。 【小物】宮本の黒いスマートフォン(画面に抽象的な通知アイコン群)、宮本のデスク上のマスタードイエローのリングノート、白ノートPC。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光)+窓横のコルクボード、右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】午前の自然光ベース。白・グレー基調の室内。スマートフォン画面の光が宮本の顔を淡く照らす。 【避ける】読める実テキスト、TikTokのロゴや実際のUI再現、商標、他人物、写真風の質感。
投稿から10日が過ぎた朝だった。秋の柔らかい光が窓から差し込むせとうちマーレブルの事務所に、先に出勤していた宮本がスマートフォンの通知を見て立ち止まった。画面を凝視したまま、手が震えている。

宮本が差し出した画面を覗き込んで、神谷も目を見張った。さぬきビートの15秒ショート動画の再生数が、一晩で桁が2つ変わっている。通知が次々に表示され、スクロールしても追いつかない。いいねの数字は3桁から5桁に跳ね上がり、コメント欄は見たことのない言語で埋まっていた。
海外のユーザーがデュエット(元の動画の横に自分の動画を並べて投稿するTikTokの機能)を次々にアップしていた。ある人はキッチンで足踏みし、ある人は公園のベンチの前で踊っている。言語も国籍もばらばらなのに、それぞれが自分なりの「さぬきビート」を再現し、そこからまた別の人がデュエットを重ねて、連鎖が起きていた。コメント欄には英語・韓国語・中国語が並ぶ。「What is SANUKI BEAT?!」「This is the most Japanese thing ever」「I NEED to go to Kagawa」前回の投稿で付与した英語と中国語の多言語字幕が海外ユーザーの理解を助け、#SANUKIBEAT のハッシュタグが拡散の入口になっていた。


ほんの10日前、再生数ゼロの画面を2人で見つめていた。あのときは「届く準備はできている」と自分に言い聞かせるのが精一杯だった。それが今、画面の向こうで世界中の人がさぬきビートを踊っている。動画を「作る」から「届ける」に変えたとき、こんな景色が待っているとは想像もしなかった。
北村の涙
【シーン】せとうちマーレブル事務所で、北村が目を潤ませながら宮本のスマートフォン画面を見つめている場面。神谷と宮本がそばで静かに見守っている。奥壁の窓から秋の光が差している。 【ロケーション固定】kagawa_13 に厳密準拠。第一参照=angle_window.png、第二参照=master.png。 【キャラクター参照】kagawa/characters/北村裕設定画像.png。kagawa/characters/神谷悠馬設定画像.png。kagawa/characters/宮本彩設定画像.png。 【人物】北村(62歳男性、グレーのジャケット、宮本から差し出されたスマートフォンを片手で持ち画面を見つめている。目がわずかに潤み口元が引き結ばれている)、神谷(27歳男性、薄手のシャツ、北村の斜め後ろで静かに立っている)、宮本(24歳女性、ティールのジャケット、北村の横で見守っている。穏やかな表情)。 【構図】窓からの光が北村の横顔を照らす。北村を中心にやや右寄りの構図。神谷と宮本が両脇で見守る3人構成。 【小物】宮本の黒いスマートフォン(北村の手に)、窓辺のコルクボードに色数を抑えたピンで留めた小さな風景写真・無地の表・予定カード。 【ロケーション整合】kagawa_13:奥壁の2連窓下に前縁をそろえて横一列に並ぶ同一寸法の薄いグレーのメラミン天板デスク2台、右壁側の窓とラックの間に置く約180×90cmの横長キャスター付き自立式ホワイトボード(赤・青・黒の抽象的な海岸線・清掃地点・工程枠+マーカー3本+イレーサー)、手前右のオーク調中古会議テーブル+チャコールグレーの事務用スタッキングチェア3脚、奥壁の引き違い窓2連(白いアルミサッシ、右窓から自然光)+窓横のコルクボード、右壁のグレーのスチールラック4段。 【色調】秋の午前の光。窓からオレンジがかった柔らかい自然光が差し込み、北村の表情を暖色で照らす。室内は白・グレー基調。 【避ける】読める実テキスト、商標、他人物、写真風の質感。
遅れて出勤してきた北村が、宮本のスマートフォンを見せられた。せとうちマーレブルの代表理事として長年この土地の観光に携わってきた北村が、画面の前でしばらく黙って立ち尽くした。海外の若者たちがさぬきビートを踊る動画を、食い入るように見つめている。やがて目を潤ませた。

宮本が静かに「北村さん……」と声をかけた。北村は眼鏡を外して目元を拭い、照れたように笑った。事務所に沈黙が流れた。窓の外から港の汽笛がかすかに聞こえる。


北村の声を聞いて、神谷も胸が熱くなった。半年前の自分は「うどん県」としか知らなかった。画面の中で踊っている海外の若者たちは、自分よりさらに何も知らない。それでもあの動画を見て「行きたい」と言っている。言葉が通じなくても、文化が違っても、15秒の動画が「ここに行きたい」という気持ちを生んでいる。
宮本も目を潤ませていた。入職2年目のスタッフとして、NPOの認知度の低さにもどかしさを感じてきた。県外の同期に「せとうちマーレブルって何をしているの」と聞かれるたびに、うまく説明できなかった。しかし今、この画面を見せればいい。言葉より先に、動画が伝えてくれる。自分が伝えたかった香川の魅力が、自分の手が届かない場所にまで広がっている。
音楽と動きと笑顔。言語に依存しない要素が、国境を越えて人を動かした。見た人が自発的にデュエットを投稿し、そこからまた次の人へ連鎖が生まれる。こうして視聴者の行動で自然に広がり続ける映像や投稿のことを、バイラルコンテンツと呼ぶ。広告や宣伝で届けるのではなく、見た人自身の「やってみたい」「共有したい」という感情が拡散を生む。さぬきビートの場合は、撮影のときに初めて来た人が自然に踊り出した空気感が核になった。あの瞬間は設計では作れない。本物の楽しさが映っていたからこそ、画面越しに見た人の心も動いたのだ。
【種類】概念図(放射図)。人物は描かない。 【構図】中央にさぬきビート動画のイメージ(ポップスのリズムに合わせて踊る足のシルエット)。中央から放射状にデュエット動画の連鎖が広がる(匿名化されたアイコン群が3段階の同心円で配置され、内側から外側へ矢印が伸びる)。放射の各方向に「音楽」「動き」「笑顔」の3要素を配置し、「言語不要 → 国境を越える」の流れを示す。下部に「= バイラルコンテンツ:視聴者が自発的に拡散し、連鎖的に広がる」のキャプション。 【補助】タイトル「バイラルコンテンツの特性」、キャプション「言葉がなくても伝わるものが、国境を越える」。 【色調】白背景にブルー系の放射矢印。中央のさぬきビートイメージはゴールデンオレンジ。匿名アイコンはグレー。3要素(音楽・動き・笑顔)はティール。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、TikTokのUI再現、写真風の質感。
受け皿がない
しかし、感動のあとに現実が来た。北村の涙が乾く間もなく、宮本のスマートフォンには海外のユーザーからDM(個人宛ての直接メッセージ)が次々と届き始めていた。通知音がオフィスに響く。


宮本がDMの一覧をスクロールした。英語だけではない。韓国語や中国語のメッセージも混じっている。中には翻訳ツールで書いたらしい日本語のメッセージもあった。「家族で行きたいです。予約はどうすればいいですか」文法は拙いが、気持ちは伝わる。しかし返事を書こうにも、案内できるページがない。
体験を予約したいという声に応える受け皿がない。さぬき体験工房の予約ページは日本語だけだ。英語の案内ページもなければ、海外からの問い合わせに対応する仕組みもなかった。動画は届いた。しかし「行きたい」を「行った」に変える導線がどこにもない。


動画が爆発的に広がって多くの人に知ってもらうことと、その人たちに実際に体験を予約してもらうこと。この2つはまったく別の仕事だ。前者は起きた。しかし後者の仕組みが整っていなかった。認知が広がっても、そこから行動につなげる導線がなければ、関心はやがて消えてしまう。
しかも海外のユーザーの関心は移り変わりが速い。今は#SANUKIBEATに夢中でも、受け皿が整わないまま数日が過ぎれば、次のコンテンツに流れてしまう。関心が高まっている今だからこそ、「行きたい」を受け止める仕組みを急いで作る必要があった。


ペルソナの軸を保つ
受け皿がないまま時間だけが過ぎていく。神谷はすぐに西園寺にオンラインで相談した。バズ(SNS上で一気に話題が広がること)の状況とDMの問い合わせ、受け皿が整っていない現状を画面越しに伝えると、興奮を分かち合うよりも先に、冷静な問いが返ってきた。


林田家は、観光マーケティングコースで設計したペルソナ(たった一人の理想の視聴者像)だ。阪神間に住む30代の子育て家庭で、週末の家族旅行先をInstagramで探している。海外の若者からのバズで、当初のターゲットとは別の層に注目が集まっている。SNS上では海外ユーザーのほうが圧倒的に目立つ状況だった。ここで方向転換して海外向けのコンテンツに舵を切りたくなるのが人情だ。しかし西園寺は、その衝動にブレーキをかけた。




神谷は画面越しの西園寺の表情を見て、背筋が伸びた。バズの高揚感に流されれば、観光マーケティングの段階から積み上げてきたペルソナの軸を自分たちの手で崩すことになる。海外向けの受け皿を整えることと、次のコンテンツの方向性をペルソナに戻すこと。この2つを並行で走らせるのが、今の正解だ。
【種類】概念図(フロー図)。人物は描かない。 【構図】左から右への横フロー。左端に「バズ(認知の爆発)」、中央に「ギャップ:受け皿がない」(赤い破線で囲み「英語ページなし」「予約導線なし」と注記)、右端に「旅行会社連携で多言語ツアーページ整備 → 『惹かれる』が『動く』に変わる」。フロー全体の下部を貫くように「ペルソナ(林田家)の軸」が一本の太い青線で左から右まで通っており、判断の基準がぶれていないことを視覚化する。ギャップ部分から「受け皿の整備」への矢印が出て解消を示す。 【補助】タイトル「バズから受け皿への導線」、キャプション「ペルソナの軸を保ちながら、『惹かれる』を『動く』に変える」。 【色調】白背景にブルー系のフロー矢印。ギャップ部分は赤。ペルソナ軸の線はネイビー。解決後のフローはグリーン。 【避ける】人物の顔、実在ロゴ、写真風の質感。
北村の電話
西園寺との通話を終えると、北村がおもむろにデスクの電話を手に取った。神谷と宮本が驚いて振り返る。北村が自分から外部のパートナーに電話をかけるのは、このプロジェクトが始まって以来、初めてのことだった。

受話器の向こうから何か質問が返ってきたらしい。北村は少し考えてから、宮本のほうを振り返った。



神谷と宮本は顔を見合わせた。以前の北村なら「デジタルのことはよくわからんので」と神谷か宮本に電話を任せていただろう。しかし今、北村は自分の言葉で旅行会社に交渉している。「インターネット」も「ホームページ」も、専門用語としては正確ではないかもしれない。しかし何が起きていて、何を頼みたいかは正確に伝わっている。



電話を切った北村が、ふう、と大きく息をついた。額にうっすらと汗が浮いている。緊張していたのだろう。しかし電話の間、声は一度も震えなかった。旅行会社の担当者は前向きだったようだ。来週には具体的な打ち合わせの日時まで決まったという。
宮本がフィールドノートに旅行会社の名前と打ち合わせ日時を書き込んだ。これまでノートには取材先の情報や撮影メモが並んでいたが、そこに「外部連携」の項目が加わった。動画の制作から始まったこのプロジェクトが、地域の受け入れ体制を整える段階に進んでいる。
北村はIT用語を覚えたわけではない。「何が必要か」を自分の言葉で言えるようになったのだ。動画が海を越えたという事実を自分の目で見て、自分の感情で受け止めて、自分の判断で行動に移した。デジタルの仕組みを理解していなくても、その成果を自分の基準で評価し、次の一手を自分で打てる。それが北村の変化だった。多言語ツアーページの交渉が始まった。インバウンド(海外からの旅行者を迎え入れる)観光への布石が、北村の一本の電話から動き出した。
📌 覚えるポイント
- 音楽・動き・笑顔は言語に依存しない。言葉がなくても伝わるものほど、国境を越えて広がっていく
- 動画が広がっても、体験を予約できるページがなければ「行きたい」は「行った」にならない。バズを作る仕事と、受け皿を用意する仕事は別
- 海外バズでターゲットが逆転したように見えても、ペルソナ(林田家)に戻して判断すれば方向はぶれない。ペルソナは、想定外が起きたときの拠り所になる
- 外部パートナーとの連携に専門用語は要らない。北村が旅行会社に電話したように、何が起きていて何を頼みたいかを自分の言葉で率直に伝えればいい
- バズの核は、設計では予測できない本物の瞬間にある。さぬきビートの撮影で、初めて来た人が自然に踊り出した空気感こそが、世界中の人の心を動かした
📖 覚える用語
- バイラルコンテンツ
- 視聴者が自発的に拡散し、連鎖的に広がるコンテンツ(映像や投稿)。「バイラル」はウイルスのように広がるという意味で、広告ではなく見た人の「やってみたい」「共有したい」という感情が拡散を生む。音楽・動き・笑顔など言語に依存しない要素が強いほど国境を越えやすい
- 海外バズの発生
- さぬきビートの15秒ショート動画が、海外ユーザーのデュエット投稿を通じて爆発的に拡散しました。英語と中国語の多言語字幕と#SANUKIBEATのハッシュタグが海外への拡散を支え、再生回数は30万回を超えています。バイラルコンテンツの特性(言語に依存しない要素が国境を越える)が実証された形です
- 受け皿のギャップと対応方針
- 海外から体験予約の問い合わせが届いていますが、英語の案内ページや予約導線がない状態です。西園寺さんの助言に基づき、ペルソナ(林田家)の軸を維持しつつ、旅行会社と連携して多言語対応のツアーページ整備を並行で進めます
- 旅行会社との連携開始
- 北村代表理事が自ら旅行会社に電話し、英語の案内ページ追加を相談しました。多言語ツアーページの交渉が始まり、インバウンド観光への導線整備が具体的に動き出しています
